5年ぶりの舞台に出演する木村佳乃さん。三谷幸喜作品だという。

 初めて三谷幸喜さんの舞台と出会ったのは、もう20年近く前のことになる。パルコ劇場で、「君となら」という舞台を観て、それが、木村さんが高校生のときに夢中になって観ていたドラマ「振り返れば奴がいる」と同じ脚本家の作品だと知り驚いた。そんな彼女が、女優としてデビューして19年目の今年、初めて三谷作品に出演することになった。舞台への出演は2009年以来、5年ぶりだ。

「00年に初舞台を踏んで以来、09年まで、2年に1回ぐらいのペースで舞台には出演していたんです。やっぱり、舞台は演劇の基本だと思うので、できるだけ続けていきたい。今回は、三谷さんからお声をかけていただけたことだけでも嬉しいのに、共演者が、大竹しのぶさんをはじめ、舞台人として素晴らしい方たちばかりで……。三谷さんの演出も緻密なので、とにかく言われるがままにやるので精いっぱいです。38歳ですけど、駆け出しというか、新人気分を味わっています(笑)」

 イタリア人作家カルロ・ゴルドーニの「抜目のない未亡人」は、18世紀のヴェネツィアが舞台。金持ちで高齢の夫を看取ったばかりの未亡人が、最高の再婚相手を見つけるべく、欧州各国を代表する4人の男たちからの求婚を受ける物語だ。それを三谷さんは、舞台を現代に置き換え、大竹さん演じる未亡人を、有名監督が集まるヴェネツィア国際映画祭で、自分に相応しい役を探す女優という設定に変えた。

「私は大竹さんの妹で、姉のバーターでいい役をもらおうとするんです(笑)。三谷さんも、『まったく違う話になった』っておっしゃっていたぐらい、最初にオファーをいただいたときの役とは設定が違いました。三谷さんからは、『とにかく明るく、ニコニコと』って言われています。できあがった台本がすごく面白くて、出演者の皆さんが芸達者なので、お稽古中も、ゲラゲラ笑ってます」

“明るくニコニコ”という人物像が、もう普段の木村さんそのものだ。今回はコメディーに挑戦するわけだが、木村さんの中に、人を笑わせたい欲はあるのだろうか?

「以前、『「ぷっ」すま』という番組で、お題を与えられて記憶を頼りに絵を描くコーナーに出演したことがあるんですけど、私の絵がすごくヘンだったみたいで、いまだに、『あれは面白かった』と言われることがあります。ただ一生懸命やっていただけなんですけどね(笑)」

 芝居も、人生も、狙いを定めて頑張っていくタイプではないという。そのときどきの出会いを大切にしながら、目の前にあることに全力で取り組んで、今がある。

「今回の舞台はコメディーですけど、ただ笑えるだけじゃない。大竹さん演じる姉が、4人の監督のオファーの、どれを選ぶか。打算なのか、誠意なのか。そこに、人間の真実みたいなものが描かれていると思います」

週刊朝日  2014年6月20日号