医療機関で測った血圧がいつもの血圧より高くて、焦ったことのある人も多いだろう。

それもそのはず。血圧は1回の心拍ごとに変わる。心理状態の影響も受けるため、緊張やストレスがかかる環境では高くなり、リラックスしていると低くなる。朝と日中、夜など時間帯でも変動する。医療機関で測った血圧がすべてではない、ということだ。

 自治医科大学病院循環器内科主任教授の苅尾七臣(かずおみ)医師が注意しているのは、「仮面高血圧」だ。これは医療機関で測ると正常だが、それ以外で血圧が高い状態だ。ストレスが多く、睡眠不足になりがちな会社員に多い。ある地方公務員(60代男性)の例を挙げる。

「その方の診察時の血圧は正常値でしたが、24時間血圧を測ってもらうと、勤務中の上の血圧が、なんと180まで上がっていたのです。改めて話を聞くと、会議が多く、『何か言われたらすぐに返答する立場にある。常に臨戦態勢で会議に臨んでいるからかなぁ』と笑って話していましたが、こういう状態が最も怖いのです」(苅尾医師)

 こうしたストレス性の仮面高血圧や、明け方に血圧が急激に上がる早朝高血圧を見つけるために欠かせないのが、家庭血圧だ。高血圧の治療中であれば血圧管理のバロメーターになる。「上腕式血圧計で、毎朝、同じ時間に測るのがポイント」と苅尾医師は言う。

 わが国には4千万台ほどの家庭血圧計が家庭にあるという。しかし、正しい測り方ができている人は少ない。そう指摘するのは坂東ハートクリニック(徳島)院長の坂東正章医師だ。

「背もたれのあるイスに座り、ゆったりとした姿勢で計測しますが、それは背もたれのないイスだと、腹筋や背筋が緊張して血圧を上げてしまうからです。実際、正しく測った場合と、そうでない場合とでは、30mmHgもの違いが出ることもあります」(坂東医師)

 正しい測り方については、まず、イスにゆったりとした姿勢で座る。前かがみはダメだ。
そして、カフ(腕帯)は心臓の高さにする。通常の血圧計は左腕で測定する仕様なのも注意したい。

週刊朝日 2014年6月13日号