オハイオ州ダブリンのミュアフィールドビレッジGCで行われていた「メモリアル・トーナメント」で、見事米ツアー初優勝を成し遂げた松山英樹選手。先週の「クラウンプラザ招待」(米テキサス州フォートワース・コロニアルCC)を初の「最終日・最終組」スタートを経験した松山選手を見て、丸山茂樹氏は「米ツアー優勝は時間の問題だ」と、今回の快挙を予言していた。

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 うーん、さすがに簡単には勝たせてくれない。

 クラウンプラザ招待の話です。松山英樹にとって米PGAツアーで初めての「最終日・最終組」スタート。初優勝の期待が高まりましたが、結果は10位でした。

 最終組とはいっても、3日目が終わった時点で首位には英樹のほかに3人が並び、首位から3打差までに24人がひしめき合っていました。これが米ツアーの層の厚さですね。

 最終日、英樹にとって1番パー5での第3打がすべてを決めたようですね。残り110ヤード。「完璧」と思ったショットが、グリーンへ行ってみるとピン奥10メートルだった。そこからスイングに迷いが出てしまったというんですね。

 2番パー4は3パットのボギー、9番パー4は痛恨のダブルボギー、10番もボギーと崩れ、優勝争いから脱落しました。

 1番の第3打の話に戻ります。もうこれは本人だけの感覚なんですが、僕だったらこんな感じでしょう。

 まず、序盤にミスが何回か続いたときに初めて、「今日はタテの距離感が合わないな」とか、「スイングが違うのかな」と考えるでしょうね。出だしのホールの1打だけで、英樹のように深刻にとらえることはしません。球が飛びすぎてるんだったらむしろ、「アドレナリンが出すぎてるのかな? 今日は結構気持ちが入ってるな。少し抑えめでいこう」なんて、前向きにとらえたんじゃないかな。

 これも、英樹の経験の浅さじゃないかと思いますね。プロになって間もないし、ましてや世界最高峰の米ツアーには本格参戦したばかり。仕方ないことです。それにしても、英樹は3日目を6アンダーで回ってトップに躍り出て、最終日が1オーバー。1日で7打分プレーが悪くなり、終わってみれば首位に3打差をつけられていました。

 結果論ですけど、英樹が最終日を2アンダーで回っていれば、3人によるプレーオフに持ち込めた。2アンダーで回ることだけを考えたら、英樹にとってめちゃくちゃ難しいことではない。実際に3日目は6アンダーで回ってますし。

 最初から最終日は2アンダーで優勝できますよ、と分かってるなら、結構簡単に回れるかもしれない。でも英樹の中には、最終日もビッグスコアが要るという気持ちがあったと思う。それが空回りにつながったんでしょう。僕はこの経験が必ず次につながると確信してますし、こうして「最終日・最終組」で何度も回りながら、いろんなことを学んでいくんですよ。

 僕にとっての米ツアー初「最終日・最終組」はなんと、2000年の本格参戦第3戦でした。優勝なんて一切頭になかったですね。まぁ英樹と違ってもう30歳のいいオトナでしたし、比較的冷静にできました。得意のアプローチとパターでしのいでいく展開になるのは分かってましたから、しぶとく、しぶとく。デービス・ラブ3世(米)に言われましたよ。「お前は『ミスター・アプローチ』だな」って。結局2位でした。なんにせよ、英樹の米ツアー優勝は時間の問題。楽しみに待ちましょうよ!

週刊朝日 2014年6月13日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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