お笑い帝国の吉本興業が東京学芸大学と手を組んで教育事業に参入している。開校したのは「笑学校(しょうがっこう)」。所属の人気芸人を講師に立て、ものまねや、ラブレターの書き方など、子どもたち相手に一風変わった授業を展開。いったいどんな狙いがあるのか。

 これまで「先生」として登場したのは、品川庄司、ハリセンボン、ロバートなど押しも押されもせぬ人気芸人たちだ。しかも、このプロジェクトは教育者養成の名門、東京学芸大学とコラボレーションしており、授業の内容は吉本興業側と同大こども未来研究所で毎回話し合いを重ねて決定しているという。

 プロジェクトを指揮するよしもとクリエイティブ・エージェンシーの佐藤詳悟さんはその狙いについて、こう説明する。
「若手芸人の中にも小さい子どもを持つ『パパ芸人』が非常に多く、子育てへの関心が高い。楽しませるプロである芸人たちだからこそ、エンターテインメントと学びを組み合わせて子どもの可能性を広げるサポートができると考えました」

 これまでに行った授業は、ものまねやラブレターの書き方のほか、「スポーツテンカ」という新しいスポーツにチャレンジしたり、おもしろ小道具の発明やザリガニ好き芸人によるザリガニの授業などユニークかつバラエティーに富んだ内容だ。

 果たしてこれが、子どもたちの可能性を広げる授業なのか。監修する東京学芸大学の松田恵示教授はその効果を説明する。

「芸人さんは人の興味を引き付けて自分の世界に巻き込んでいく技術がずば抜けている。これを教育に生かせば、子どもたちはもっと学ぶ楽しさを実感できるはず。笑いというフィルターを通すことで、子どもたちは教わったことをグイグイ吸収し、自分自身で考えることができる。多くのプレッシャーを抱える現代の子どもたちにとって学びは苦しいことになりがちだが、おもしろいと感じる体験を通して学ぶことや生きることのおもしろさに気づいてもらえると思います」

 ものまねや、ラブレターの書き方を学ぶことに意味はあるのか。

「学校では教えないけれど、生きていくために必要な力がある。笑いを通して自分を表現したり、言葉の持つ力を知りコミュニケーション力を育むことは大きな力になるはず」

週刊朝日  2014年5月30日号より抜粋