「年金の引き下げ」反対デモ (c)朝日新聞社 @@写禁
「年金の引き下げ」反対デモ (c)朝日新聞社 @@写禁

 年金制度への不信感が一気に膨らんでいる。現役の厚生労働大臣が、年金受給の開始年齢を大幅に引き上げる案を突然示唆したのだ。われわれの年金は大丈夫なのか。だが、老後に備えている人は多くない。「老後破綻」しないために、今すぐ自分の老後は自分で守る知恵をつけたい。

 年金コンサルタントの三宅明彦さんは、こう苦言を呈す。

「年金に『おんぶにだっこ』の人が多すぎます。年金だけで不自由なく暮らしていける時代は終わりました。自助努力で備えておかなければ、生き残れない時代になったのです」

 心配しなくてはいけないのは、「長生きリスク」だ。“想定外”に長生きした場合、資金が枯渇してしまって「老後破綻」になりかねない。

 長寿国ニッポンにとって、なんともつらい時代になってしまったが、現実逃避していてもはじまらない。まずは定年後の生活費がいくら必要になるのか考えてみたい。

 フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長によると、

「退職後は、交際費などが減るため、生活費は平均で現役時代の68%程度です。少なくとも60%ほど見ておいたほうがいいでしょう」とアドバイスする。

 長生きリスクを考えて、仮に95歳まで生きると想定してみよう。死ぬまでに必要な生活費は、ざっくりと「現役時代の年収×60%×35年(60~95歳)」だ。

 現役時代は会社員で年収が600万円だった人は、退職後に必要になる金額は1億2600万円となる。仮に現行の年金制度(標準世帯の厚生年金の受給月額約23万円)が維持され、退職金を2千万円もらったとしても、約2千万円も不足してしまうという。

「このくらいの規模の資産をためるには、早めに行動して、長期で運用することが大事です」(前出の野尻所長)

 では、2千万円を備えるためには、どれくらいの期間、どれくらいの資金を、どれくらいの利率で運用すればいいのだろうか。

 あなたがいま35歳であれば、65歳まであと30年。年利平均3%あれば、毎月3万4321円を投資して運用すればたまる(積立合計金額は1235万円)。45歳だと毎月6万920。55歳だと14万3121円だ。

 だが、年金制度への不安は根強い。もう少し多めに備えておきたいという人もいるだろう。また、退職金が少なかったり、老後は旅行や習い事などの趣味にお金をかけたいという人も少なくない。

 備える金額を3千万円とした場合、年利3%だと、35歳は約5万1481円、45歳は毎月約9万1379円、55歳は21万4682円だ。

 とはいえ、銀行の預金金利が微々たる時代。年利3%なんて到底無理……と思っている方は、ちょっと待ってほしい。

 資産運用アドバイザーの尾藤峰男さんは、笑顔でこう答えるのだ。

「インデックスファンドの長期積み立て投資で十分達成できる利率です」

 インデックスファンドとは、日経平均株価やダウ工業株平均などの指数に連動する成果を目指すもの。販売手数料は無料のものもあるため、毎月積み立てる長期投資に向いている。

 資本主義200年の中で欧米の株式市場は平均で1年間約7%成長しているといわれる。もちろん、リーマン・ショックなどの金融危機で大幅下落した年もあった。それでも、世界の株式市場は、そうした危機を吸収して上昇してきたのだ。ダウ工業株平均は5月13日、史上最高値を更新している。

「大事なことは投資方針をいったん決めて買ったら10年、15年と投資し続けること。下がったから、上がったからといって売ってはいけません。長く持つほど複利効果が出て含み益も大きくなるからです」(前出の尾藤さん)

 我慢して手間をかけて超長期で運用するからこそ、平均して高い利回りが期待できるというわけなのだ。

週刊朝日  2014年5月30日号より抜粋