認知症予防について調べるべく、本誌記者の山本朋史(62)が筑波大学付属病院の認知力アップトレーニングに参加。臨床心理士らの指導をうけながら、数人のチームに分かれて、認知機能ゲーム「アタマ倶楽部」で集中力トレーニングを行った。

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「アタマ倶楽部」というゲームは3種類あるそうだ。新世代株式会社の中川克也社長(57)らが2005年に開発したものだ。

 この日は二つのグループに分かれて対戦した。ぼくが入ったAグループは15人が参加した。ゲームの解答を押すための四つのボタンがついたコントローラー装置が一人ひとりに渡される。みんな何回か挑戦したことがあるのか、前の席に座ったほうが速く反応できるとか、この番号の装置は接触がよくなくて遅いとか、いろいろ声を上げ始める。

 最初のゲームでは、前方のモニター画面に二つのひらがなが映し出された。機械音が話し出す。「次の二つの文字で違う文字だったらボタンを押してください。同じ文字だったら押さないで。3、2、1ハイ始め」

 画面に文字が現れる。

「か・さ」

 いっせいにボタンが押される。ぼくも即答したつもりだったが、正解の早押し順位を見ると9位だった。後ろから4番目だ。次に、

「か・が」

 自信を待って早押し。3 位だ。こんな調子でゲームは進んだ。6回のゲームが終わった時点で、15人の総合成績が画面に現れる。ぼくが持っている13番の機械は得点90点で全体の5 位。1位は11番の機械を持っていた人で130点だった。もう少し高い得点だと思ったが、ケアに来ている高齢者は訓練の賜物(たまもの)だろうか、彼らの敏捷性が優れているのか追いつかない。

 次は数字の問題。算数の足し算引き算で、計算が正しければ早く押す。

「14+27=41」

 あれ、大丈夫と思ってボタンを押すと、6位。

「71-15=56」

 ちょっと手間取ったが3 位。緊張して間違っている計算にボタンを押してしまう人もいる。このゲームの総合成績は70点で4位タイ。6回ゲームをやって4位がいちばん成績がよかった。1位と2位の人は名前を呼ばれて拍手をされる。ぼくは参加者の中では最も若いと思っていたが、一度も1位は取れなかった。

 目立ったらダメだ、と思っていたのは最初だけ。すぐに真剣に早押しした。それでもぼくより高齢の方々に惨敗。みじめというか、自分の頭の回転の遅さに戸惑った。

 休憩時間にK助手に様子を聞かれて、「みなさん、ボタンを押すのが速い。圧倒殲滅(せんめつ)されて自信がなくなりました」と答えると、K助手は、「みなさん慣れているから私もかなわない」と言ってくれた。トレーニングで明らかに高齢者も敏捷性が高まっている。

週刊朝日  2014年5月23日号より抜粋