札幌市北区の商業施設や警察関連施設でカセットコンロ用ガスボンベによる爆発が相次いだ事件で、北海道警が道警官舎への激発物破裂容疑で逮捕した無職・名須川早苗容疑者(51)の勾留理由開示の法廷が5月9 日、札幌簡裁で開かれた。名須川容疑者の主張がはじまると、その“爆弾発言”に法廷は凍りついた。

「取り調べを受けていました」

 札幌北署の駐車場で爆発が起きた1月27日朝、名須川容疑者は別の窃盗事件の事情聴取のため、同署の取調室にいたことを明かしたのだ。4月までの5件の爆発事件は同一犯としていた道警の主張が大きく揺らいだ瞬間だった。

 警察も標的になった連続爆発事件で、「威信のかかった捜査」(道警幹部)を続ける道警によって、名須川容疑者は4月26日に家宅捜索を受け、任意の事情聴取を5日間も受けた末に逮捕された。だが、名須川容疑青は逮捕後も一貫して容疑を否認。法廷では道警の取り調べの問題も暴露した。

「取り調べの警官が、机にファイルをたたきつけて供述を迫った」

「黙秘権はよくわからない。聞かれたことは答えなければと取り調べで言われた」

 名須川容疑菅はたばこが好きで、取り調べのときも吸いたがるという。

「たばこをネタにすれば道警に有利な供述調書がつくれると思い、強引に逮捕したのではないか」(名須川容疑菅の弁護士)

 道内では、名須川容疑者が逮捕されてからも、5月4日朝に道警の駐在所、6 日には大型書店でガスボンベの爆発事件が発生。同様の爆発が続いている。

 道警はこれについて、「模倣犯によるもの」と説明。名須川容疑者が語った1月27日の矛盾については、

「取り調べを受けていたのは事実。だが、5件が同一犯という見方は変わらない」

 という。しかし道警内からは、「もっと慎重にやればよかった。泥舟だ」という声も漏れ聞こえる。勾留期限も迫っている。追いつめられた道警に、次なる一手があるのだろうか。

週刊朝日  2014年5月23日号