「男性の着衣を嗅がせ、『捜せ!』と命じたところ、家から100メートルくらい先のマンション群の間で、地面を嗅ぐようにクンクン反応して、まるで待つように座りました。そこへ、捜していた男性が歩き疲れたようにやってきたんです。迷われたんでしょうか、マンションの周りをぐるぐる回っていたようです」(同県警警察犬係の内幸一警部補)

 このケースも、家族が何時間も捜したのに見つからなかった。「先入観や固定観念が発見から遠ざける」と内さんは言う。犬は人と違って純粋に嗅覚だけで捜すのが強み。その嗅覚は人の数千倍も鋭いのだとか。

 ただ、いくら鼻が利くとはいえ、排ガスや香水や食べ物など“においの誘惑”で混乱することもある。

「警察犬が行方不明者などを捜すには、足跡追及のような訓練がモノをいいますが、担当者との相性や絆も大事。夫婦みたいなものですから」

 犬の性格を見抜く重要性を指摘する内さんは、さらに続ける。

「ヴァーラ号はおとなしくナーバスなので、強く叱ると落ち込んでしまう。だから褒めて育ててきました」

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋