オバマ大統領はミシェル夫人の人気に助けられているという(写真:gettyimages)
オバマ大統領はミシェル夫人の人気に助けられているという(写真:gettyimages)

 オバマ米大統領が4月23日に来日する。だが今回はミシェル夫人が同行しない夫だけの国賓待遇に専門家は「異例」と口をそろえる。なかには「非礼」に近いとの声もあるが、その経歴から浮かぶイメージは真逆。いったいどんな人物なのか。

 夫人は1964年1月生まれの50歳。シカゴの貧困層が少なくない地域で育ちながら、名門のプリンストン大とハーバード大ロースクールを卒業した。

 その後、弁護士としてシカゴの法律事務所に勤務するが、そこにオバマ氏が研修で訪れたのが出会いのきっかけだ。同じシカゴ出身であるテレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏は「弁護士としては超一流です」と言う。

「特に名門のシカゴ大学で付属病院の部長や副院長といった要職を歴任。一方、当時のオバマ氏はイリノイ州の新人議員。実のところ、最初は夫婦のキャリアに差があったんです」

 デーブ氏によるとファーストレディーは立派な「仕事」であり、「もう一人の副大統領」と見るべきだという。報酬は無償だが、予算も夫人を支えるスタッフも手当てされている。「子どもの肥満対策など、評価の高いプログラムを手がけています。つまりミシェル夫人は大統領のブレーンであり、有力なアドバイザーの一人です」

 米国のファーストレディーは伝統的に「良妻賢母タイプ」と「キャリアタイプ」の二つが存在するが、ミシェル夫人は両方を兼ね備えた「ハイブリッド型」だと指摘するのは作家で翻訳家の井上篤夫氏だ。

 井上氏は『ミシェル・オバマ~愛が生んだ奇跡』(デヴィッド・コルバート著、アートデイズ)を翻訳したほか、シカゴでも現地取材をしている。「良妻賢母タイプは最近ならジョージ・ブッシュ大統領のローラ夫人。キャリアタイプの代表はヒラリー・クリントン夫人です。ミシェル夫人も極めて有能な職業人ですが、常に『最も大切なのは母であり妻であること』と公言しています。米国では新しいファーストレディー像として高い人気を得ています」

 オバマ大統領は名演説家として知られているが、その草稿はミシェル夫人がチェックし、夫が妻の前で演説して“最終確認”をしているのだという。

 となれば「夫を一流に育て上げた妻」(デーブ氏)や「実のところ妻がボスであり、夫の大統領は部下」(井上氏)という評価が出てくるのも当然だろう。

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋