ペットはいまや人生のパートナーだ。動物が飼える集合住宅が増える一方、飼い主の高齢化などで手放さざるを得ないケースも出ていて、その多くは引き取り手がいない。そんななか、を飼う“権利”が付いた賃貸物件が首都圏で広がっているという。互いが幸せに暮らす現場を訪ねた。

 会社員の森下恵子さん(51)が、雌猫のルナ(推定2歳)と一緒に暮らすようになって、ちょうど1年。自宅は都内でも人気の目黒区エリアに立つ賃貸マンションで、間取りは1DK(約36平方メートル)だ。

「築20年ですが、住み心地はいいですよ。駅から近いし、出窓があるので猫も気に入ってます」

 最近では、ペットを飼えるマンションは決して珍しくなくなった。だが、ここには、ちょっとユニークなシステムがある。その名もずばり、<猫付きマンション>。といっても借りた部屋に猫がついているわけではなく、猫を飼うための“権利”が部屋についているのだ。森下さんが説明する。

「ルナは正式な飼い猫でなくレンタル。猫を所有しているのは『東京キャットガーディアン』というNPO法人で、そこから猫を預かって同居しているんです」

 東京キャットガーディアンは2008年に東京の大塚、12年以降に西国分寺、蒲田の3カ所で猫カフェ形式の保護・譲渡施設をオープンした。同時に、猫たちを希望者に貸し出し、ペット可マンションで飼ってもらう事業を始めた。もちろんマンションオーナーの同意が必要になる。その後、このシステムを利用できる賃貸物件は徐々に増えており、今は目黒区、文京区、杉並区、神奈川県川崎市など20戸以上を数える。

 企画の発案者であるNPOの山本葉子代表に会うため大塚の施設を訪ねた。ビルを改築したシェルターに猫が70匹近く収容されていた。主に関東地区の保健所から引き取っているという。キジ、白、茶トラなどの雑種から、毛がフワフワの洋猫や、視力を失ったハンディのある猫も。ほとんどがもともとは飼い猫だったが、人間の都合で捨てられたという。

「猫付きマンションは、行き場を失った“成猫”(1歳以上)の救済策。里親が一人でも増えてくれないかと思っています」(山本さん)

 子猫は捨てられても、もらい手が見つかりやすいが、成猫が保健所に持ち込まれると、その多くが引き取り手もなく、殺処分される運命なのだという。猫のブログやマンガなどが流行する一方で、不幸な末路をたどる猫は後を絶たないのだ。

週刊朝日  2014年4月25日号より抜粋