谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)1931年、東京都生まれ。52年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。詩だけでなく、絵本、翻訳、作詞など、世界的な評価も高い。近刊に絵本『かないくん』(松本大洋氏との共著) (撮影/写真部・関口達朗)
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
1931年、東京都生まれ。52年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。詩だけでなく、絵本、翻訳、作詞など、世界的な評価も高い。近刊に絵本『かないくん』(松本大洋氏との共著) (撮影/写真部・関口達朗)
落合恵子(おちあい・けいこ)1945年生まれ。文化放送アナウンサーを経て作家に。子どもの本の専門店「クレヨンハウス」主宰。女性の人権や環境問題を巡る活動にも従事。最新刊に『「わたし」は「わたし」になっていく』(撮影/写真部・関口達朗)
落合恵子(おちあい・けいこ)
1945年生まれ。文化放送アナウンサーを経て作家に。子どもの本の専門店「クレヨンハウス」主宰。女性の人権や環境問題を巡る活動にも従事。最新刊に『「わたし」は「わたし」になっていく』(撮影/写真部・関口達朗)
谷川俊太郎さん(左)と落合恵子さん(右) (撮影/写真部・関口達朗)
谷川俊太郎さん(左)と落合恵子さん(右) (撮影/写真部・関口達朗)

 詩人の谷川俊太郎さんは、現在82歳。詩の創作はもちろん、絵本の制作や、詩と音楽のコンサートを開いたりと、精力的な活動をしている。作家の落合恵子さんとの対談で、自身の死生観について話した。

*  *  *
谷川:僕自身も、若いころから死ぬことはあまり怖くなかった。ただ、母親が死ぬことが怖かったですね。すごく依存してたから。今でも、自分が愛するものの死のほうが怖い。自分が死ぬのは、むしろ楽しみになったんですけど。

落合:もし望むなら、どんな死を望まれますか?

谷川:父親の死に方が僕の理想です。

落合:お父様は哲学者の谷川徹三さん。

谷川:前の日まで元気で、パーティーに出席していたんです。すごく社交的で、そういうところが大好きな人で。帰ってきて、「おなかこわした」と下痢をしていたんだけど、お風呂に入って、「じゃあ、また明日」って、2階の寝室で寝て、そのまま死んでしまったんです。全然苦しみもせず。おなかの中も、体もきれいにしてね。

落合:それは理想ですね。みんなそういうふうに死にたいって望んでいるんじゃないかしら。

谷川:家庭的には困った父でね(笑)。僕は反面教師で生きてきました。でも死に方だけは感心しましたね、これはいいなと。

落合:何も分からないまま、す~っと。私も「昨日あんなに元気だったのに」と言われる死に方がいいな。泣いたあとに、「でも、良かったね」と言ってくれるような死に方。谷川さん、死ぬなら朝がいいですか、夜がいいですか?

谷川:そこまでは選べないですよ、ぜいたくすぎる(笑)。でも、寝てるときに死ねるといいかな。

落合:死ぬときに誰かそばにいてほしいですか?

谷川:あんまり大げさにされたくないですねえ。だって気恥ずかしいじゃないですか。誰かが泣きわめいたりすると気を使っちゃうから。「死ぬのやめるから、おとなしくしてて!」 ってなっちゃいそう(笑)。

落合:ちょっとサービスしちゃうんだ!

谷川:まあ、もし意識があればですけどね(笑)。

週刊朝日  2014年4月25日号より抜粋