藤巻健史氏が日銀の「異次元の金融緩和」に反対する理由

連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」

 3月31日の参議院決算委員会で日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁に質問をした藤巻健史参議院議員。「異次元の金融緩和」は「出口戦略」がないと危機感をつのらせる。

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 私は30年以上も金融界で働いてきたが、昨年まで日銀は「宴たけなわの時に『そろそろお開きにしましょうね』と警鐘を鳴らす役だ」と思っていた。選挙を気にして短視眼的な経済政策に走りがちな政治に立ち向かう最後の砦だと思っていたのだ。ところがいまや、日銀は安倍政権の経済政策「アベノミクス」の先頭に立って音頭を取っている。

 日銀が「異次元の金融緩和(リフレ政策)」を開始してから1年がたった。金融市場から国債などを買い入れ世の中に出回るお金の量を増やす政策だ。この1年を振り返って成果をたたえる記事が多い。しかし反対論の人も相変わらず多いことを忘れてはならない。

 全国地方銀行協会の機関誌「地銀協月報」の1月号の特集「検証アベノミクス」に執筆させていただいた。

 ほかの執筆者2人のうちの一人は慶応大学大学院の小幡績・准教授だった。私とおなじく、「異次元の金融緩和」に、昔から反対している。小幡氏は、この論文の中で「昨年秋の金融学会におけるパネルディスカッションの聴衆(ほとんどが研究者である)にリフレ政策への賛否を尋ねたところ、半数を大きく上回って大多数の人々が反対に挙手をした」と書いている。

 私は研究者ではないが、一応、日本金融学会に所属している。このパネルディスカッションに出席していたならば反対論に両手だけでなく両足も挙げて賛成したかったくらいだ。

 異次元の金融緩和は、「出口戦略」がないから怖い。第2次世界大戦中に軍備拡張のためにお金をばらまいたため、日本政府は戦後、「新円の発行と預金封鎖」という暴力的な資金の吸収に走らざるを得なかった。

 私が決算委員会で黒田総裁に「出口を教えてくれ」と迫ったとき、予想通り、「まだデフレ脱却を目指しているときだから出口戦略を考えるのは時期尚早」と答弁された。

 私は金融のプロを自負しているが、私の頭では、出口論が思いつかない。もし私が現役時代に、時の日銀総裁に「1年後にはインフレ加速が危惧されます。その時、どういう政策が考えられますか?」と聞けば、間違いなく「その時は、公定歩合をあげたり、売りオペ(日銀が保有する債券などを売って円を回収すること)をしたり、預金準備率(日銀が民間の銀行からお金を預かる比率)をあげます」と答えてくれたはずだ。

 やはり出口戦略を明示できないのは方法がないからだ。そう思わざるを得ない。ブレーキのない車のアクセルを思いっきり踏み込むのは危険である。

 副作用の大きい金融緩和をすぐに解消し、伝統的な金利政策(政策金利を上下する)に戻るべきなのだ。金利がゼロになったら、次はマイナス金利にすべきだ。なぜプラスの0.00001%が良くて、マイナスの0.00001%がいけないのか? 20年来の私の主張である。

週刊朝日  2014年4月25日号より抜粋

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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