理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダー(30)が4月9日、英科学誌「ネイチャー」に掲載された疑惑の「STAP細胞」論文をめぐって会見を行った。

 小保方氏は、4月8日には理研に対し「不服申し立て」を提出し、再調査を要求。理研側の今後の出方次第では、処分をめぐる民事訴訟に発展する可能性も指摘されているのだ。

 ある科学ジャーナリストは、仮に訴訟になった場合、「小保方氏が有利ではないか」と予想する。

「当初、理研側が『2冊』と言っていた実験ノートが小保方氏の会見でほかにもあったと発覚するなど、調査は結論を急ぎすぎており、ずさんだった。画像の差し替えが意図的なねつ造だったことを示す確たる証拠もない。裁判で小保方氏が勝つことも十分あり得る」

 しかし、たとえ訴訟に勝ったとしても、小保方氏の現在の雇用契約期間は4月1日からの1年間であり、その後も理研が契約更新に応じる保証はない。このため、やはり巨大組織である理研の優位は変わらないという見方もある。前出の理研関係者が語る。

「研究者の世界では、国家権力がバックにあり莫大な予算を持つ理研の力はとてつもなく大きい。理研と本気で敵対したら次の就職先が見つからないのは小保方さんもわかっているはず。理研の幹部も『勝負は決まっている。小保方さんは“軟着陸”するしかないよ』と予測していました」

 理研側は、今後1年をかけてSTAP細胞の作製について検証するチームを立ち上げている。

 小保方氏はチームに加わっていないが、細胞の作製に独特の“コツ”があるというのなら、それを知る小保方氏を無視できない。検証チームの丹羽仁史プロジェクトリーダーは「(小保方氏の)協力を得られるものなら得たい」と話している。解雇はせずに検証作業に協力させて、1年後に契約満了――そんな「軟着陸」シナリオも考えられるのだ。

 若い小保方氏の人生は、まだまだこれから。その後は、どこへ行くのだろうか。理研を所管する文科省の幹部はこう語った。

「理研は湯川秀樹博士などが輩出した文部科学省系の名門。国内の大学や研究所はムラ社会なので、ここまでのトラブルを起こした小保方さんを雇う機関はないでしょう。ただ、米国や中国の研究所なら彼女を受け入れるところがあると思う。海外で研究を続けてSTAP細胞の存在を証明して賞でもとれば、それこそ、『凱旋帰国』する日が来るかもしれない」

 複雑怪奇な小保方問題の“解”は、先端科学でも予測できそうにない。

(本誌取材班:小泉耕平、馬場勇人、今西憲之)

週刊朝日  2014年4月25日号より抜粋

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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