閉鎖的な競輪界に、武氏以外の著名人からも疑問の声があがり始めている (c)朝日新聞社 @@写禁
閉鎖的な競輪界に、武氏以外の著名人からも疑問の声があがり始めている (c)朝日新聞社 @@写禁

 競輪界が、最近なんだかおかしい。

 長塚智広(35)、武田豊樹(40)、村上義弘(39)らトップ選手が昨年12月、日本競輪選手会の退会と新団体への移籍を表明したと思ったら、ほどなくして撤回。謝罪会見をしたと思ったら、今度は最高1年の出場自粛勧告という重いペナルティーが科せられたのだ。

 この間、選手も選手会も一様に口を閉ざしたまま。

「彼らの謝罪は誰に対してのものだったのだろう」

 こう首をかしげるのは、武豊騎手(45)だ。長年の競輪ファンで、選手らとの交流も深い。

「同じ公営競技に関わる者として五輪種目でもある競輪は誇り。レースに人間模様がにじみ、大人が真剣に自転車をこぐ姿が好きだ。今回の騒動はいったい誰が得をしたのか。選手にペナルティーを科すのもおかしい」

 発端は昨年12月19日、都内で開かれた会見だった。

「東京五輪が決まった。愛する競輪が衰退していく中で、何かしなければならないと思った」

 口々にそう言って選手会からの離脱を表明したのはトップ選手ばかり18人(最終的には23人)。東日本大震災復興支援のために立ち上げた一般財団法人SS11を母体とする新選手会を立ち上げ、環境改善を行うと宣言したのだ。

 この行動の背景には二つの大きな「想い」があった。五輪など国際大会に向けた選手強化態勢が整っていないこと。そして、91年に約1兆9553億円あった車券売り上げが2011年には約6230億円にまで減少していることだ。

 だが、選手会は選手らの反乱に強硬策で対応。会見の翌日、佐久間重光理事長が全会員にあてて出した文面は「私は憤慨しています」から始まり、「このような行為は容認しない」と強い調子で結ばれていた。

 選手会は、所属していなければレースに出場できない上、退職金支給も行うので、「トップ選手だけではなく、下位選手の生活も守る」ことを掲げる組織だ。だからこその強気の姿勢で、SS11が新たな所属先として認められる保証がなかったことも選手側にとっては痛手だった。選手らは次第に結束を失い、謝罪をして長期間の出場自粛処分を受ける事態になってしまった。

 だが、トップ選手不在のレースに、ファンは足を運ぶのだろうか。公営競技に詳しいスポーツジャーナリストの島田明宏さんは、

「ペナルティーは引退勧告に等しい。選手会は競技力と人気の向上を願った選手の想いを理解しなければならない。このままでは選手がかわいそうだし、ファンもますます離れてしまう」

 選手会に大人の対応が求められている。

週刊朝日  2014年4月18日号