刑事、内装業社長、ダンサー 古田新太の居酒屋交流

現代の肖像 古田新太 (eAERA) [Kindle版]

神山典士著/今井一詞写真

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 さまざまな人々が夜毎、集う居酒屋。そこには訪れる人の数だけ幾通りもの人生がある。俳優の古田新太が、酒場で交流を深めた常連客を語った。

*  *  *
 毎度毎度、飲み屋の話で申しわけない。

 その日の前日は「隠蔽捜査」というドラマの打ち上げだった。杉本哲太さんとのW主演(華がないな)。視聴率的には今一つだったが、仕上がりも良く、凄く充実した現場だった。打ち上げ飲み会は、オッサンばっかりで楽しく盛り上がり、朝まで飲み、昼に寝て、夕方起きて、飲み屋に向かった。

 いつものようにカウンターに一人で座る。「こんにちは」。後ろから声がかかる。常連客の刑事さんだ。この人は捜査一課の人で、強面(こわもて)だが気さくな人だ。昨日ドラマの打ち上げだった旨を伝えると「お疲れ様でした」と感想を語ってくれた。本職のお巡りさんは、刑事ドラマが嫌いな人が多いと聞くが、この人は「隠蔽捜査」を非常に褒めてくれた。警視庁と警察庁との温度差や人間関係が、凄く面白く描けている。当然フィクションだから、んな訳ねえよ、みたいなシーンはあるが、それも含めて面白いと。こんな風に言われると、本当に嬉しい。一生懸命作った甲斐があるというものだ。昨日の打ち上げ前に会いたかった。ドラマの中のエピソードで、警察官の息子が麻薬をやっていたというのがあったのだが、そういう不祥事はぶっちゃけあるらしい。

「我々警察官は全員、竜崎(ドラマの主人公。原理原則に拘【こだわ】る、とんでもない堅物)だ」「事件解決の為(ため)に、日夜頑張っている」と。そうそう、そういうお巡りさんがいるから、安心して暮らせるのだ。不祥事ばかりのニュースが目立ちますが、頑張ってくださいと言うと苦笑いしていた。

「うい~す」。またもや後ろから声がかかる。お久しぶりですね、最近姿見せなかったじゃないですか、おいらが答える。この人は、会社や店舗の内装を請け負う会社の社長だ。今、滅茶苦茶忙しいらしい。3月の年度末なのはもちろん、消費税アップにともない、どこも今年度中に改装・修理してしまおうと注文が入るらしい。「じゃあ、ホクホクですね」と言うと、今これだけ発注が来ているという事は、来年度の仕事が大幅に減るという事らしい。8月決算の会社も、消費税アップ前にやってしまおうって腹だから、今年の下半期は大変との事だ。なかなか八方丸くとはいかないもんなんですな。

「こんばんはー」。今度はダンサーの女の子だ。29歳の美人ちゃんだ。最近顔出してなかったけど、どうしてたの? 「あたし、結婚したんです」。えー! 全然知らなかった、とりあえずおめでとう。いつ? 「昨年の3月です」。おー、じゃ、もう1年なんだ。「で、離婚したんです」。えー! いつ? 「昨年7月です」。4カ月しかもたなかったの、いろいろあるんだろうけど。早急に事を進めちゃったからじゃないの。「1年半付き合ってたんですけどね。結婚した途端、とんでもない我(わ)が儘(まま)だった事が発覚して」。離婚って面倒臭そうだけど大丈夫だった? 「やっぱり、お金の事とか面倒臭いですね」。じゃあ、もう暫(しばら)くは男はやだね。「いえ、彼氏欲しいし、結婚したいです」。おー、大丈夫。君は美人ちゃんだしいい奴だ。おじさん達は君のファンだ。さあ飲みたまえ。

 こうして夜は更けていく。明日も楽しく飲む為に、一生懸命働こう。

週刊朝日  2014年4月11日号

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