「(切除が受けられないのであれば、その前段階として)まずは、50歳以下の乳がん患者全員に遺伝子検査を受けてもらうこと、それから家族歴の調査を実施すること。この二つを実践すれば、リスクのある方が危険にさらされたままという状況が回避できます」

 さらに、日本に限らず多くの国でHBOCの対策が遅れていることを指摘した。

「イギリスやカナダ、スウェーデンなど一部の国では自己負担でも遺伝子検査自体が認められていません。自分の遺伝情報を知りたいと望んでいる人がいて、それが実現可能にもかかわらず、ノーというのはどうなんでしょう」

 同センターでは潜在的なHBOC患者を見つけて、早い段階からケアをしたほうがいいという考えのもと、HBOCの疑いがある・なしにかかわらず、受診した患者全員に五つの質問に答えてもらっている。その結果からHBOCの可能性のある患者がいると、遺伝子検査を受けるよう話をする。ちなみに、検査にかかる負担を軽くするため、検査費用は無料にしている。

 HBOCと診断された後は、病気についてよく理解してもらった上で、年代に応じた検査を受けたり、希望者には予防的切除・再建や抗エストロゲン剤のタモキシフェン、経口避妊薬の投与を実施したりする。

 ファンク医師は、いつか日本でも予防切除ができるようになることを願う。「そのときは日本でも執刀したいわ」と笑った。

週刊朝日  2014年4月11日号