スペインには「ワイン・ルート(Rutas del vino)」と呼ばれる、ワイナリーを楽しむための観光コースがある。今注目されているのは、著名な建築家による斬新な設計・デザインのワイナリー訪問だ。醸造所のコンセプトを超えた建物が、絶品ワインと共に訪問者を魅了する。ほんの一部をご紹介しよう。

【Hotel Marques de Riscal by Frank O. Gehry】
 スペインで最も有名なワイン産地Rioja(リオハ)のワイナリーの中でも、パイオニアであるマルケス・デ・リスカルは、2006年、世間をあっと言わせるデザインのホテルをオープンした。ビルバオにあるグッゲンハイム美術館を見たオーナーが、「これだ!」と思い、世界的建築家のフランク・O・ゲーリーに設計・建設を依頼したものだ。ゲーリーはホテルの内装から外観まで、ほとんどのデザインを自ら担当し、色や形だけでなく、材料の雨風に対する耐久性も現地で実験を通して確認したうえで、建物を完成させた。ここではアバンギャルドな建築美だけでなく、ワインはもちろん、ワインセラピーやミシュラン一つ星レストランの味も楽しめ、ワイナリー見学もできる。

【Bodegas BAIGORRI by Inaki Aspiazu Iza】
 スペイン・バスク地方を中心に活躍する建築家、イ二ャキ・アスピアース・イサが設計したワイナリーは、土地の高低差を利用したワイン造りを考えたシンプルで機能的なデザインの建築だ。1階のレセプションスペースは、四面ガラス張りの箱型で、時間帯と眺める角度によって見える風景と光が変化し、建物の印象が変わる。そこから地下へ向かって順に、葡萄の選別、発酵、熟成のスペースが設けられている。地下7階の施設は、動力ポンプを使わずに重力を最大限に生かすことで、葡萄へのストレスを減らし、自然でエコなワイン製造を実現している。ここで造られる4種類のワインに合わせたコース料理が楽しめるレストランも評判だ。 

週刊朝日  2014年4月11日号