池田清彦教授 フランスの“虫取り放題”のキャンプに感動 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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池田清彦教授 フランスの“虫取り放題”のキャンプに感動

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 以前に比べれば、国内で採集できる虫の数や種類は格段に少なくなってきている。早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は、フランスの昆虫採集事情に感心したという。

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 3月9日に日本蝶類学会の総会があって、「虫と進化論」と題する講演をした。しかし今回述べるのはその話ではない。私の講演の前に竹中一夫さんの「仏領ギアナ採集記」という講演があり、かなりうらやましかったのでその話をしよう。

 同じヨーロッパでもドイツは基本的に昆虫採集が禁止という、採集禁止原理主義者が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している国だが、フランスはまことにおおらかで、特別な場所以外は自由に採集ができる。採集禁止にすれば昆虫が増えるかというと、もちろんそんなことはない。生息域がごく狭い種類を乱獲しない限り、昆虫にとっての適正な環境が保全されている限り、人が網で採ったくらいで虫は減らない。

 仏領ギアナは昆虫採集が趣味の人を歓迎してくれるキャンプがあり、そこでは採集用のナイターの設備をはじめ、至れり尽くせりで自由に虫採りができるという。ピカピカに光るモルフォチョウや、世界で最も美しい蝶といわれるミイロタテハ、世界最大の甲虫であるタイタンオオウスバカミキリなど、虫好きなら一度は採ってみたい大物が豊産するようだ。是非訪れてみたいものだ。現地の人達の中には昆虫を採集して、標本や装飾品にして売って生計を立てている人も多いと聞く。重要なのはこういうやり方で数十年経つが、昆虫の個体数には変化がないことだ。自然のバランスを壊さない程度に採集していれば問題はないのである。これは漁業にも言えることで、乱獲は慎まなければならないが、適正な利用は人々の福祉に資するのである。現地の人達もよく分かっているようで、翅が少しでも破損している蝶は採っても逃がしているようだ。野外で翅が全く破れていない蝶はむしろ稀なので結果的に乱獲を防いでいるのだろう。

 日本では最近昆虫の個体数の減少が激しく、事情を知らない人や一部のマスコミは、その原因をマニアの乱獲のせいにしているが、主たる原因は環境改変(農薬の散布、林道の舗装化、原野の開墾など)にあることは間違いない。都市の公園にも以前は様々な昆虫が生息していたが、枯れ木や落ち葉を撤去して、芝生を植えて、害虫駆除と称して農薬を撒いていれば、虫がいなくなるのは当たり前だ。それで、昆虫採集禁止といった立て札を立てている。笑止であろう。数年前、明治神宮で昆虫の調査をしたことがあった。カブトムシ、ノコギリクワガタ、タマムシなどが沢山いた。枯れ木や落ち葉をそのままにしておくだけで、こんなにも虫がいることに驚いた。他の都市公園も是非見習ってもらいたい。

週刊朝日  2014年4月11日号


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