全国各地から集まった参加者たちが、川内原発の再稼働反対を訴えた=3月16日午後、鹿児島市 (c)朝日新聞社 @@写禁
全国各地から集まった参加者たちが、川内原発の再稼働反対を訴えた=3月16日午後、鹿児島市 (c)朝日新聞社 @@写禁

 もう黙っていられない――。原発のある13道県の現職地方議員147人が、再稼働計画を進める安倍政権に公開質問状を突きつけた。地方議員たちの訴えをジャーナリストの桐島瞬が取材をした。

 政府に公開質問状を提出したのは「原発立地自治体住民連合」。北海道から鹿児島まで原発を所有する13道県の、無所属系などの地方議員が名を連ねている。

 作家で反原発運動家の広瀬隆氏が今年はじめ、知り合いの議員たちに声をかけたところ、2カ月足らずでこれだけ集まった。広瀬氏が言う。

「原発立地地区に住む人たちは、再稼働したら自分たちの生活がなくなり、命を奪われるかもしれない恐怖と向かい合わせでいる。東京の人たちとは深刻さが違うのです」

 原発立地住民の気持ちを裏付けるデータがある。共同通信の調査によると、全国の原発30キロ圏の自治体で再稼働を容認するのはわずか2割。また、再稼働候補に挙げられている伊方原発(愛媛)のある四国住民の86.9%が不安に思い、66.3%が即時廃止か段階的廃止を求めている。

「そんな状況なのに、政府は原発をベースロード電源にするという。こんなことを許していいのか。それが、公開質問状を出す目的です」(広瀬氏)

 住民連合は3月24日に参議院議員会館で共同代表ら9人が一般参加者を交えて集会を開いた後、内閣府大臣官房総務課に質問状を手渡した。

 質問は全部で七つあり、いずれも政府の再稼働に向けた原発政策の矛盾点を突いている。この日、行われた議員の説明から、国や電力会社のおかしな点を引用しよう。

 泊原発のある北海道の岩内町議会議員・佐藤英行氏(市民自治を考える会)は、国との交渉で思いがけない言葉を聞いたという。

「今年1月、原子力規制庁と交渉したときのことです。新基準を満たした原発でも事故は起きますか?と尋ねると、相手は『基準は最低のもので、事故は起きます。あとは事業者の責任です』と言うのです。つまり、国は原発事故が起きるのに再稼働にゴーサインを出そうとしていることになる。私の地元の泊原発で事故が起きたときの想定も甘い。一例を挙げると、3本の主要道路のうち1本しか止まらない不完全なシミュレーションしかしていません」

 安倍晋三首相は、原発の新基準を「世界最高水準の安全基準」と言った。だが実際には「最低」レベルの基準だったのだ。

 原発耐震指針への不信感を強く抱く議員もいる。新潟県柏崎市議の矢部忠夫氏(社会クラブ)だ。

「2006年に原発耐震指針が改定されましたが、翌年の新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発の基盤が傾くなど、大きな被害が出ました。これでは指針自体が信頼できません」

 矢部氏によると、日本には06年の原発耐震指針に適合する原子炉は一基もない。それに、柏崎刈羽原発事故が起きたときの首相は、再稼働に躍起になっている安倍晋三現首相だ。

「本人が地震直後に現地入りしていました。このときにしっかりと事故を総括していれば、福島原発事故は防げたのではないでしょうか」(矢部氏)

週刊朝日  2014年4月11日号