外部の会計士らを交えた調査で幕引きを図りたい渡辺代表。4月4日の定例会見には姿を見せるのか (c)朝日新聞社 @@写禁
外部の会計士らを交えた調査で幕引きを図りたい渡辺代表。4月4日の定例会見には姿を見せるのか (c)朝日新聞社 @@写禁

 DHC会長からの8億円借り入れ問題で、みんなの党の渡辺喜美代表(62)が大ピンチだ。政倫審出席を求める与野党から総攻撃を受け、党内からも「辞任」を求める声が出始めた。一方、今回の問題が進まなかった野党再編を後押しする。荒れ模様の政界を本誌取材班が探った。

“渡辺包囲網”は政権だけでなく外にも広がっている。渡辺代表の問題は公職選挙法などに違反する疑いがあるとして、東京都の市民団体の男性が28日、東京地検特捜部に告発状を提出した。

 特捜部は今後、告発状を受理するのか検討するが、元同特捜部の若狭勝弁護士は「受理される可能性は高い。渡辺氏の立件もあり得る」と指摘する。

「国民の関心が高い事案なので、受理して捜査する可能性は高いでしょう。公選法では借入金を選挙費用に充てた場合、選挙用の収支報告書に記載するよう定めている。特捜部は銀行に照合し、渡辺氏の預金口座の『入り』と『出』を徹底的に調べるはずです。同時にDHC会長からも聞き取りを行う。選挙資金として渡辺氏に貸しつけ、それが実際に使われた裏付けが取れれば、立件となるでしょう」

 みんなの党内には「もうもたない」「代表は辞任すべき」との声も出始めている。所属の国会議員はこう話す。

「昨夏の参院選後、渡辺代表は党の資金を私物化しているとの批判が出たとき、代表は『私物化どころか、個人的に借金をして選挙費用に回している』と反論していました。だから今回の代表の弁明を冷ややかに見ています。地位にしがみつかず、潔く辞めてくれと思っている議員は多い」

 都内の地方議員は別の見方をする。

「渡辺代表が辞任して別の人がトップになったところで、党の支持率は回復するでしょうか。進むも地獄、辞めるも地獄です。もはや昨年末に党を出ていった江田憲司代表の『結いの党』に期待するしかない。早く『維新の会』と合併してもらい、それに乗り込むのがベストではないでしょうか」

 思わぬ形で期待を寄せられた「結い」。維新の会との合流に向けて1月からスタートした政策協議は、3月26日にようやく、成長戦略や社会保障制度など60項目について大筋で合意した。ただ、安全保障政策などについては両党の隔たりは大きいまま。

 結いの江田代表が目指す今夏の合併、新党結成にはハードルが高そうだが、結いの参院議員は否定する。

「確かに維新内には石原慎太郎共同代表をはじめ、合併に後ろ向きな人もいます。でも大阪の橋下徹市長の人気が落ちていることもあり、『このままでは選挙を戦えない。早く新党を作ろう』との声が維新内でも高まっている。そこに渡辺ショックです。21人いるみんなの党議員の多くが移籍を希望し、総勢90人近い新党の可能性があるとなると、維新と結いの距離は急速に縮まっていくはずです」

 これを裏付けるかのように、4月初旬、維新の石原代表と結いの江田代表が会談を行う予定だ。これまで結いを「護憲政権」と批判してきた石原氏側から会談を提案したこともあり、大きな注目を集めている。

 維新の衆院議員が言う。

「もともと石原さんは自分抜きで合併話が進んでいることに、ヘソを曲げたところもあった。でも、きちんと合併のメリットを説明すると耳を傾けてくれる。最近、『渡辺のところは議員が何人いるんだ』と興味を持ち始めた。憲法改正で考えの近い安倍首相との良好な関係は保ちつつも、数を重視し、新党結成に前向きになる可能性も考えられます」

 1強多弱が続く永田町で、変化が起きるのか。注目したい。

週刊朝日  2014年4月11日号