手術や放射線治療と同じように、抗がん剤治療も患者が医療機関を選ぶ時代になってきた。

 ここでは、いい抗がん剤治療を受けられる病院選びのポイントを七つ示した。「(1)外来で抗がん剤治療が受けられる」「(2)がん薬物療法専門医(中略)チームワークがとれている」「(3)患者の希望を聞き、適切な方法を提案してくれる」、とくに再発がんや進行がんでは重視したい項目だ。「(4)治療に腫瘍内科医がかかわる」ことも大事なポイントだ。腫瘍内科医とはその名のとおり、がん治療に詳しい内科医だ。海外では抗がん剤治療のほか、全身管理や治療方針を決定するなど、がん治療のキーパーソンとなっている。また、その患者に合ったがん医療をコーディネートする役割も担う。

 そして、この腫瘍内科医の役割を主に担っているのが、日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」だ。近畿大学病院腫瘍内科教授の中川和彦医師は言う。

「腫瘍内科ができたのは最近のことで、以前はその臓器を担当する外科医が抗がん剤治療も担当していました。いまもその流れは続きますが、近年は抗がん剤治療の進歩などもあり、専門性が増したことから、腫瘍内科に任せる医療機関も出てきています」

 現在、抗がん剤治療を腫瘍内科医が担当する場合、「主治医としてかかわる」パターンと、「主治医はがんのある臓器を専門にする外科医や内科医で、腫瘍内科医が一緒にかかわる」パターンがある。

 理想は腫瘍内科医が主治医となり、必要に応じて臓器専門の外科医や内科医が一緒に治療をすることだが、腫瘍内科医の数は限られている。それがむずかしい場合でも、後者のように腫瘍内科医が抗がん剤治療にかかわっていたほうがよい。

「抗がん剤治療に詳しい医師がいる医療機関とそうでないところとでは、抗がん剤治療の質が大きく違ってきます。抗がん剤治療は1回の通院で終わるものではなく、長期間付き合う必要のある医療です。そういうことも考えて、ご自身や家族でしっかり信頼できる医療機関を選んでください」(中川医師)

 手術と抗がん剤治療を別の医療機関で受けることは、めずらしいことではない。遠方で手術を受けた場合は、自分の住む地域に条件を満たした医療機関があるか、手術を受けた施設の腫瘍内科医やソーシャルワーカーに聞いてみるのも手だ。別の医療機関にいる腫瘍内科医に、セカンドオピニオンをとってもよいだろう。

 では、外科医の考えはどうなのか。消化器外科医から腫瘍内科医になった県立広島病院(広島市)臨床腫瘍科主任部長の篠崎勝則医師は、外科医から腫瘍内科医への橋渡し的な役割も果たす。自身はがん薬物療法専門医の資格を持つが、資格がないまま抗がん剤治療を実施する外科医を多く知る。

「実は“専門の臓器については手術も、抗がん剤治療も詳しくありたい”と思って、抗がん剤治療を学んでいる外科医もいます。しかし、抗がん剤治療の質を上げたり、充実したチーム医療の体制を整えたりするための時間が、外科医にはありません。結果的に、そこまで気配りができないのが現状です」(篠崎医師)

 このほかには、治療が長期間にわたることを考えると、「(5)自宅との距離が近いなど、苦痛なく通院できる」「(6)スタッフが寄り添ってくれる」医療機関を選ぶことも大切だ。

「(7)治験をやっている」病院も、いい抗がん剤治療を受けるための参考になる。治療とは臨床試験のことで、新薬の有効性や副作用の状況を試験し、保険適用にするかを検討するためのものだ。自分のがんに該当する治験があり、条件が当てはまっていたら、その治験に参加することができる。

 治験を実施するためには、施設環境やスタッフ数など、いくつかの基準を満たさなければならない。つまり、治験を受ける・受けないは別としても、抗がん剤治療を受ける施設としては、合格点をもらっていると考えていいだろう。

週刊朝日  2014年4月4日号