ドラマや音楽といったコンテンツを輸出し、国のブランドイメージを上げる国家戦略「クールジャパン」。初めてこの言葉が使われたのは2004年だが、東日本大震災以降、海外で風評被害にさらされていた日本の国家イメージを上げる要となった。本格始動したクールジャパンは成功するのか。本誌記者の渡辺哲哉が取材した。

 経産省が立ち上げた「クールジャパン官民有識者会議」は12年に、推進課題としてリスクマネーの供給や現地のインフラ整備を挙げた。課題克服のための「官民ファンド」構想が持ち上がり、13年に関連法が成立する。ファンド「クールジャパン機構」は昨秋に誕生した。

 3月11日に自民党本部で行われたクールジャパン戦略推進特命委員会の初会合で、太田仲之社長は同機構の基本方針をこう説明した。

「空中戦で日本のコンテンツを流し、地上戦で日本のいい物を並べファンを作るプラットホームを整備していく。長期的に根がはるまで支援する」

 経産省の説明によると「国内には海外から評価されているものが多いのに商売につながっていない。企業が海外に打って出るのに必要な、テレビの放送枠やショッピングモールといった拠点づくりをファンドが応援するということ」。

 資金は現在375億円。今後、申し込み案件を精査し、投資先を決めていく。20年ほどで投資を回収する予定で、「われわれにも同じようなファンドがあるが、5年で回収しなければならない。20年もあればインフラへの投資も可能だ。正直うらやましい」(韓国政府関係者)。

 現政権の後押しにより、本格稼働し始めたクールジャパンだが、今後どこまで推進力が働くかは未知数だ。最終的に政治力がものをいう世界。自民党の関連会合には、10人程度の議員しか姿をみせない。商工族もご無沙汰だ。

「この分野は票にもカネにもならない。エンタメ業界にパーティー券を売っても1枚か2枚、付き合いで買ってくれる程度。漫画が大好きとか損得抜きじゃないと、政治家が汗をかく分野にはならない」(閣僚の一人)

 前出の韓国政府関係者は、こう指摘する。

「クールコリアはすでに世界的に成功しており、関連行事ともなると政治家が大挙して現れる。日本も成功事例ができれば政治家が群がってくるはず」

 果たしてクールジャパンは世界との競争に勝ち残れるのか。

週刊朝日  2014年4月4日号