“伝説のディーラー”藤巻健史氏は、今後国債の買い手がいなくなることをこう危惧している。

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 3月5日の参議院予算委員会で麻生太郎財務相に質問した。質疑のなかで財務相は、「これだけ大量に国債を発行しているのに、長期金利が低位安定している。この理由を説明できた経済学者は一人もいない。日本国債には借用があるのだから、今後とも国債発行に関しては心配していない」と言った。

 経済学者には難しくても、元ディーラーの私なら簡単に説明できる。日本銀行が大量に国債を買っているからだ。マネタリーベース(日銀が供給する通貨量)270兆円を達成するために、2012年末に89兆円だった長期国債の保有を今年末までに190兆円に増やそうとしている。2年間で100兆円の買い出動だ。

 新年度予算案は例年どおり40兆円を超える赤字である。誰かが、この穴埋めに発行される40兆円分の国債を「買い増し」してくれなければならない。

 国債の保有者が「売らない」だけではだめなのだ。新しい借金分を誰かが「買い増し」してくれなければならない。この買い増し役を日銀が引き受けているということだ。

 しかし、日銀が、その買い増し役を降りる今年末以降が心配だ。誰が買ってくれるのだろう? マーケットは先を読むから、危機はもっと早いかもしれない。「日銀がさらに国債を買い増せばいい」と安易に考えてほしくない。「日銀が買い続ける限り債券価格は下がらない(=金利は上がらず、低位安定する)。だから安全だ」との考えは、「国民の財産がすべてねずみ講にシフトするまで、ねずみ講は破綻しない」との主張と同じだ。

週刊朝日  2014年3月28日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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