食道がんは早期で見つかれば内視鏡治療で食道を残せる。だが、診断された人のうち、内視鏡治療を受けられるのは20%程度だ。どうすれば早期に見つかるのか。早期がんの診断に詳しい慶応義塾大学病院内視鏡センター副センター長の大森泰(たい)医師に聞いた。

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 早期の食道がんは、ほとんど自覚症状がありません。しかし食道がんを発症する危険がある人は明らかになっています。

 WHO(世界保健機関)の下部機構であるIARC(国際がん研究機関)が示す食道がんの危険因子は、高度喫煙と高度飲酒です。飲酒に関しては、特にアルコールを代謝する際に発生するアセトアルデヒドが発がん物質として判定されています。飲酒でアセトアルデヒドが分泌されても、アセトアルデヒド脱水素酵素が体内にあれば分解できますが、日本人の約10%は遺伝的にこの酵素を全く持たないためお酒を飲めません。約40%は多少この酵素がありますが十分ではなく、飲酒によりアセトアルデヒドが体内に残ります。こうした人が飲酒をすると、お酒を飲まない人と比べると食道がんの危険性が1日1合で約7倍に、4合だと103倍に跳ね上がるのです。

 お酒を飲むと顔が赤くなる、胸がドキドキする、二日酔いになりやすいといった人はアセトアルデヒドを分解する酵素が少ない証拠です。「昔は顔が赤くなったけれど今は赤くならない」という人もいますが、体の反応が鈍くなっただけで、アセトアルデヒドを分解する酵素が増えたわけではないので要注意です。

 喫煙の場合、1日20本のたばこを30年間続けると非喫煙者に比べて食道がんの危険性は30倍になります。飲酒も喫煙もする人はさらに危険性が高まります。

 また、1年間で食道がんになった人のうち、80%が50歳以上の男性というデータもあります。このため、50歳以上の男性で飲酒や喫煙をしている人は、1年に1回は検診を受けましょう。

 食道がんを早期発見するための最も有効な方法は内視鏡検査です。食道がんの危険因子は咽頭(いんとう)がんにも当てはまり、食道がんに咽頭がんが合併する確率は3割近くにのぼります。咽頭がんも早期なら内視鏡治療で治ります。内視鏡検査を受ける際には食道と咽頭ともに診てもらいましょう。

週刊朝日  2014年3月28日号