3月にアメリカのフロリダで開催されたキャデラック選手権に、松山英樹選手が出場した。ここで起きた「アクシデント」について、プロゴルファーの丸山茂樹氏は次のように話す。

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 キャデラック選手権(米フロリダ州トランプナショナル・ブルーモンスター、3月6~9日)に出場した松山英樹(22)は、34位でしたね。

 この試合まで、英樹はプロ転向後の米PGAツアー出場試合で、最低の順位が25位。今回がワーストということになりますけど、これまでが驚異的だったわけで。ただ、今回は池ポチャが堪(こた)えたでしょうね。池の怖さはこれからフロリダシリーズで味わっていくと思うので、嫌悪感を持たずにやっていってくれたらな、と思いますね。

 この試合では、英樹にまつわる騒動がありました。2日目の13番。英樹がグリーン面をパターでたたいて穴ぼこを作り、それを埋めずに14番へ向かった。これを後続組のイアン・ポールター(英)が、160万人ものフォロワーがいるツイッターで「愚か者」とつぶやいたんです。

 ポールターと同組のチャール・シュワーツェル(南ア)のパットのライン上に、その窪(くぼ)みがあったらしいんですね。僕は、ポールターの言ってることは正しいんだけど、何も世界に向けて発信しなくても……と思います。38歳にしては大人げないんじゃないか、と。

 英樹を呼びだして、直接言えばいいのに。まあポールターって、もともとクレーマーっぽいところがあって、あんまり人と接するのが得意じゃないタイプなんですよね。僕自身も、彼とはあまりうまくやれなかった。「変わったヤツだな」と、ずっと思ってました。

 
 英樹はすぐに翌朝、ポールターらに謝りに行った。これで一件落着となりました。英樹は若い。カーッとして、こういうこともしてしまう。一つひとつ、勉強していきゃあいいんです。

 石川遼は、キャデラック選手権の「裏開催」になったプエルトリコ・オープンで19位でした。2年前には2位に入った試合だけに悔しさもあるでしょうけどね。メンツがそろってない試合とはいっても、20位に入ってれば、いい。ちょっと調子がよければ優勝争いですから。

 この試合で優勝したチェソン・ハドリー(米)は昨シーズン、下部のウェブドットコムツアーで賞金王に輝き、初の米ツアー出場権を獲得した選手です。メンツが薄い試合でパッと勝てるのって、本当の実力なんですよね。遼も彼の優勝を目の当たりにして、「追いつきたい」と強く思ったでしょうね。

 さて、英樹はこれでいったん日本へ戻り、東北福祉大の卒業式に出たり、痛めていた左手の検査をしたりして、4月10日開幕のマスターズ(米ジョージア州オーガスタ)に臨みます。4週も試合に出ないことになるので、僕はこの間の試合出場を勧めたんですけどね。まあ、英樹には英樹のやり方がありますから。

 マスターズへのアプローチは選手それぞれですね。フィル・ミケルソン(米)みたいに、必ず前週の試合に出る人もいれば、2週間前にオーガスタへ入って調整する人もいる。僕は両方やってみたんですけど、意外と前週試合に出て、いつもの流れのルーティンでマスターズに臨んだ方が、よかったですね。

 英樹にとって3度目のマスターズ。アマチュア時代のように伸び伸びやってくれれば。英樹には高い球があるし、オーガスタのグリーンが固くなっても対応できる。期待してますよっ!

週刊朝日  2014年3月28日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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