早稲田大学
早稲田大学

 早稲田大学と慶應義塾大学、「私学の両雄」は宿命のライバルとして百余年熱いバトルを繰り広げてきた。しかしお互いの特徴は違うようだ。

「一般的に慶應生は自分を宣伝しない。空気を読んで発言するタイプが多いですね。対して早稲田生は自己宣伝能力が高く、パフォーマンスが得意な傾向があります。政治家なら雄弁会の伝統がありますし、演劇も盛んです。スポーツでもフィギュアスケート羽生結弦選手が早稲田というのは象徴的だと思いますね」(宗教学者の島田裕巳氏)

 島田氏の指摘した「パフォーマンスが得意」な早稲田が目立つのは当然なのかもしれないが、慶應も今回調べた、芥川賞、直木賞、男性・女性アナウンサー、日本アカデミー賞受賞者、現役プロ野球選手、現役Jリーガー、ロンドン五輪・ソチ五輪出場選手のすべての項目で該当者のいないものは一つもない。やはり早慶戦の伝統は失われていないということなのだろう。

 もっとも、最近は早慶の学生の個性がなくなりつつあるという声も少なくない。元経済産業省の官僚で、現在はシンクタンク「青山社中」の筆頭代表を務める朝比奈一郎氏が言う。

「現在、私はリーダー塾を開催しているので現役の学生に会うことも多いのですが、やはり若い人になるほど、早稲田らしさ、慶應らしさが感じられませんね」

 慶大名誉教授で明海大学外国語学部の大津由紀雄教授も同意見だ。

「以前の受験生は慶應志望、早稲田志望がはっきりしていましたが、今は就職率を比較するぐらいです。結果的に校風が失われて平板化し、学生も似てきました」

 大津教授によると、早慶に限らず、いわゆる偏差値の高い大学は、中長期的な計画としていずれも「グローバル化」を掲げるなど、教育内容や方針からも個性が失われているという。

「ところがグローバリゼーションの中心ともいえるアメリカでは大学が個性を競いあっています。いたずらに国際化を強調するより、大学としてどんな学生を求めているのか、それをメッセージとして発信するにはどうしたらいいのか、むしろ足元をしっかりと考え直す必要があるのではないでしょうか」

 早慶の“弱点”は研究部門だと指摘するのは、大学通信の安田賢治・常務取締役だ。

「早慶の卒業生は多彩で、私学の雄であることは確かですが、ノーベル賞の受賞者はいません。国立大学のOBばかりです。確かに研究費のケタが違うなど国立大に比べてハンディはありますが、今後は研究機関としても躍進を果たしてほしい。ノーベル賞といえば、早大のOBの村上春樹氏が文学賞に輝けば早稲田は必ず活性化し、その個性が再認識されるでしょう」

週刊朝日  2014年3月28日号