自主憲法制定にこだわった岸元首相も、他国の防衛については「ノー」と答弁していた (c)朝日新聞社 @@写禁
自主憲法制定にこだわった岸元首相も、他国の防衛については「ノー」と答弁していた (c)朝日新聞社 @@写禁

 集団的自衛権の憲法解釈を変更し、行使容認へと突き進む安倍政権。「いまの憲法はそこまで許していない」と拡大解釈に歯止めをかけてきた過去の政権と、明確に一線を画している。護憲、改憲の立場を超え、小泉内閣時代に内閣法制局長官を務めた阪田雅裕氏(70)が、元「法の番人」として問題点を語った。

「よく誤解されるのですが、私は『9条が尊いから守らないといけない』という護憲派でも平和主義者でもありません。政権が集団的自衛権の解釈を変えて行使を容認するなら、なぜ変える必要があるのか国民に十分説明をし、ふさわしい憲法にするため国民投票などの改正手続きを経るべきだと主張しているのです。

 安倍晋三首相(59)がおっしゃるとおり、確かに日本の安全保障環境は変わったかもしれない。そうであるなら具体的にどう変わったか、まずは相当な労力をかけて国民が理解できるようにするべきです。そのプロセスが民主主義ではないでしょうか」

 内閣法制局長官時代、官房長官だった安倍氏と集団的自衛権をめぐってやりとりしたことがあったという。安倍首相の祖父、岸信介首相(当時)の国会答弁についてだった。
「『岸首相は集団的自衛権の行使をすべて否定していたわけではなく、行使できるものもあると答弁していた』と、安倍さんは当時そう発信されてらっしゃいました。多少の誤解をされていたので、必要なご説明をさせていただきました。

 岸首相の国会答弁は『同盟締結国や友好国が侵害された場合、そこに出かけて行って防衛することは憲法では認められていない』というものでした。その一方で『集団的自衛権に基地を貸すとか経済的援助とかいったものまで含まれるのであれば、9条の下でも許されないわけではない』とも答弁しています。当初から集団的自衛権の中核的部分である武力の行使は否定しているのです。

 岸首相の時代は、集団的自衛権が何を意味するか、国際法上の定義は必ずしも固まっていませんでした。国連憲章で登場した新しい概念だったからです。ですが、岸首相の時代から今まで、政府の考え方は全く揺らいでいないのです」

週刊朝日  2014年3月21日号