東日本大震災直後、被災地の救援や福島第一原発の事故対応に、海上自衛隊はどのように行動したのか。最大時には艦艇60隻、航空機100機、人員1万6千人を動員した当時の状況を、部隊を指揮した元横須賀地方総監高嶋博視さん(61)が明かした。

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 我々は沿岸部や離島の救援活動、行方不明者の捜索を行いました。沿岸部は道路が遮断されて孤立しているところが多く、海からの救援を必要としていました。

 これはあまり知られていませんが、福島第一原発の原子炉を冷やす水が足りず、海上から冷却水を搬入したのは海上自衛隊でした。米海軍から提供されたバージ(鉄の箱)に真水を満載し、福島第一原発の岸壁まで海上自衛隊の船が運んだのです。この作戦は「オペレーション・アクア(真水作戦)」と名付けられました。

「突入部隊」の隊員は、完全防護服の下に、もよおしたときのために紙オムツを着用しました。しかし、放射線量に関する現場の情報はありません。恐れたのは、隊員がロープをさばく作業中に足を滑らせて海に落下すること。防護服は海に落ちることを想定していない。汚染された水を大量に飲み込んだら、大変なことになると考えていました。

 この任務を見事に遂行したのは、熟練の40代、50代の隊員たちでした。真水を満載したバージをけん引するタグボート(曳船)を見事に操ったのです。通常、基地でそういった仕事をするのは、長期間の航海をすることが体力的に難しくなった隊員たちです。突入部隊は、「老兵」が非常に頑張ってくれました。

 震災から3年が経過し、海上自衛隊の知られざるエピソードをまとめた著書『武人の本懐』(講談社)をこのたび出版しました。我々は将来も災害から逃れることはできません。そのためにも記録を残しておきたいと考えたからです。

週刊朝日  2014年3月21日号