更年期障害の症状があらわれても、すぐに婦人科を受診する人は少ない。更年期専門の「秋桜(コスモス)外来」を開設している東京歯科大学市川総合病院の高松潔医師に更年期障害への向き合い方を聞いた。

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 更年期障害への薬物療法には、主としてホルモン補充療法(HRT)、漢方療法、抗うつ薬などの向精神薬投与の三つがあり、ほかにカウンセリングなどがあります。これらの治療は婦人科で受れらますが、「病院が敷居が高い」「婦人科に行くほどではない」と二の足を踏む人もいるかもしれません。だったら、まずはサプリメントを試したり、漢方薬局で相談してもかまいません。まずは動き始めることです。

「それでも効かない」というときには婦人科へ。日本女性医学学会の「女性ヘルスケア専門医」のいる病院をホームページで探してみてください。女性の更年期について詳しい医師なら、今いちばんつらい症状が何かを見極め、いくつもの選択肢の中から最善の治療を提案してくれるはずです。

 HRTはホットフラッシュに効く、漢方薬はめまいなどの症状に効くなど、それぞれの特性もわかってきていますし、HRTが効かない患者さんにカウンセリングをしたところ、9割が改善したというデータもあります。まれに、更年期障害ではなくバセドウ病などの甲状腺機能異常症だったというようなこともあるので専門医の目は重要です。

 HRTへの抵抗感の強い方もいるかもしれませんが、骨も丈夫にするし、肥満も防ぐし、アンチエイジングにも効果があります。HRTで死亡率が30%下がるというデータもあります。

「HRTを5年以上施行すると乳がん発生率が1.26倍になる」という報告があるのは確かですが、もともと乳がんの発生率は1万人に30人ですから、1.26倍になっても1万人あたり38人になる程度。現状では、リスクより長所のほうがはるかに大きいのです。エストロゲンを使うのであれば、閉経後早期から始めることをおすすめします。

 日本の女性の平均寿命は86歳ですが、健康寿命(介護を必要とせずに暮らせる時期)は74歳とされています。閉経後も続く長い人生を健康に過ごすためには、更年期に婦人科で一度しっかり心身をチェックすることがとても大事なのです。

週刊朝日  2014年3月14日号