報道陣に公開された福島第一の中央制御室 (c)朝日新聞社 @@写禁
報道陣に公開された福島第一の中央制御室 (c)朝日新聞社 @@写禁

 政府は、安全性が確認された原発は再稼働を進めるとの方針を明記したエネルギー基本計画案を決定した。しかし、ここのところ毎日のように異常トラブルが発生している福島第一原発(フクイチ)。ジャーナリストの桐島瞬氏がその実態を取材した。

 2月18日には、2号機の圧力容器の底につけられた温度計の点検で、100ボルトの電圧をかけるところ、250ボルトを流して壊してしまった。この温度計は、溶けた燃料が再臨界しないかを監視する重要な役割を果たしていた。

 同25日朝には、地盤改良工事のため構内道路を重機で掘り返している最中、地中の電源ケーブルを切断した。このケーブルが4号機使用済み燃料プールの冷却装置に電気を供給していたため、およそ4時間半にわたって冷却が停止した。

 同じ日の午後には、構内の給油所でぼや騒ぎも起きている。ポンプの吸入管に付いたガソリンをふき取っていたところ、摩擦熱で発生した静電気がガソリンに引火して火災が発生した。幸いにも作業員の防護服が一部燃えた程度で済んだが、一歩間違えば重大災害につながるところだった。

 翌26日にはフクイチ現場を報道陣に公開。小野明福島第一原発所長が「信頼を回復するのはトラブルを起こさないことが一番。改善策を遂行し……」と語ったその舌の根の乾かぬうちに、「ただ今、トラブル情報が入りました」と担当者から報道陣に伝えられた。

 多核種除去装置(ALPS)がまたも運転停止となったのである。なぜ、こんなにトラブルが起きるのか。フクイチ作業員の解説。

「一つには、仮設設備だということがあります。しっかりとした図面などないため、道路の下の配管がどこに埋まっているのか、ある程度しかわからない。手探りで作業を進めるから、ケーブルを切断してしまう。起こるべくして起きたトラブルと言えます」

 また、現場が工期に追われている現状も見逃せないという。

「国と自治体、それに東電がロードマップに沿って作業工程を決めていく。そこには、施行する元請け企業以下の意見など反映されません。私の周りを見ても、スケジュールが厳しく、3〜4交代で進めなければならないような作業もこれから入ってきます。上から急げ急げと言われても現場は簡単に対応できず、ミスが生まれやすくなるのです」

 実際、昨年6月に改定された中長期ロードマップでは、1、2号機からの燃料デブリ取り出しが1年半前倒しになっている。こうしたことが続くと、現場は混乱し、トラブルにつながるミスが起きやすくなるというわけだ。

 相次ぐトラブルに原子力規制委員会からも「極めて稚拙なミス」「企業体質にかなり問題がある」などの厳しい意見が続出した。

 東電の相澤善吾副社長は、28日に開かれた会見でこんな本音を漏らした。

「だんだん麻痺しがちになるが、大変なことなんだということを強く意識する必要がある」

 安倍政権に物申す。こんな状態で再稼働に舵を切って本当に大丈夫ですか?

週刊朝日  2014年3月14日号