日本外交の要であるはずの日米関係が、いま、悪化の一途を辿っている。

 2月27日、米国のアーミテージ元国務副長官が、ワシントン市内での講演で、

「安倍首相の靖国参拝は過去の首相より政治的な色彩を帯びていた」

「参拝が中国を喜ばせたことは間違いない。中国は各国外務省に『日本はポツダム宣言に基づく国際秩序を順守しない国』『言った通りだろう』と言うだけでよかった。中国の外交を後押しすることになった。これが私の参拝への反対理由だ」

 と、苦言を呈した。

 アーミテージ氏は米政府関係者の中でも随一の知日家として知られ、安倍首相とも親交がある人物。米政府から「失望」を表明されただけでなく、旧知の“友人”にまで懸念を表明される事態は、何を意味するのか。ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏が解説する。

「米国の東アジア戦略は、台頭する中国に対抗するため、日・米・韓が緊密に連携していくことが基本。参拝により日韓の亀裂が深まり、『東アジアの平和は日本が乱している』と宣伝したい中国は喜ぶ。米国は、そうした事態を心配しているのです」

 米国のいらだちは、2月20日付で公表された米議会調査局による日米関係の報告書にも如実に表れていた。

 38ページに及ぶ報告書の冒頭の見出しは、ズバリ「靖国神社参拝が北東アジアの緊張を高める」だ。

<安倍首相の参拝への反応は、日本国外では一律にネガティブなものだった>
<安倍首相が米国の助言を無視して突然、参拝したという事実は、両国の信頼関係を一定程度、損ねた>

 と、かなり厳しい見方を示している。

 また、<安倍首相と歴史問題>という項目では、以下のように記されていた。

<安倍首相は大日本帝国による侵略とアジア諸国の犠牲を拒否する、歴史修正主義者の視点を持っている>
<安倍首相の内閣にはナショナリストとして有名な政治家が多く選ばれており、いくつかの事例では、大日本帝国時代の行動をたたえるような、超国家主義的な主張があらわれている>

 安倍首相の右傾化路線を露骨にけん制しているのだ。

週刊朝日 2014年3月14日号