その豊富な鉄分や免疫活性化作用が、一部の人々にとっては逆に肝臓へダメージを与えてしまうこともあるウコン。国立健康・栄養研究所や東京都福祉保健局のホームページに載った事例を調べると、看過できないものも存在する。

 ハートライフ病院の事例では、30代の男性が二日酔い防止にウコンを多量摂取し、肝機能が低下、劇症化して死亡。国立国際医療研究センターの報告でも、38歳の男性が飲酒による肝機能低下を防ぐ目的でウコンとシジミエキスを毎日摂取した結果、2カ月後に劇症肝炎を発症している。

 名古屋大学大学院医学系研究科教授で肝臓病、免疫疾患を専門とする石川哲也医師は「軽症の場合、大半は原因食品の摂取中止で軽快します。ただ、健康食品は長期間摂っているケースが多く、その分、回復に時間がかかることもあります。C型慢性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のほか、ウイルス性肝炎全般、肝硬変、胆石、胆嚢炎、自己免疫疾患のある人もウコンには注意すべきです」。

 一方、メーカー側はウコンの安全性をどう考えているか。「ウコンの力」ブランドで知られるハウス食品のグループ本社広報IR部に聞いた。

「ウコンは香辛料や漢方薬として十分な食経験を持ち、安全性の高い素材と考えています。臨床試験を実施して発売し、お客様に高い支持をいただいています。C型慢性肝炎やNASHなどでは、ウコンが含有する鉄分が悪い影響を与える場合があると言われています。弊社グループは、製品の鉄分量が微量であると確認してホームページに公表、原料の鉄分量も継続的にモニタリングしています」

 メーカー側も、ウコンの悪影響を認識したうえで、臨床試験を行い情報公開に努めているようだ。

 ならば、ウコンとの関わり方を石川医師に聞いた。

「肝機能の数値が悪化したからと、すぐにウコンに飛び付くのはおすすめできません。肝臓に不安のある人は、摂るのであれば事前に医師へ相談することです。死亡例もある事実を忘れないでください。併せて、どんな健康食品でも肝障害の原因になる可能性があり、健康食品全般による肝障害もこのところ増えていますので、ウコンに限らずご用心を」

 また、医師としてはウコンを推奨する立場でないと前置きし、「選ぶなら成分表示がしっかり書かれているもの。信頼性の目安ですし、被害が出た際、何が原因かの検索に役立ちます。用法・用量を守ることも心掛けてください」と注意を促す。

週刊朝日  2014年3月7日号