モルガン銀行東京支店長などを務め、“伝説のディーラー”の異名をとった藤巻健史氏。「小さな政府」の予算編成をしなければ、財政破綻の可能性が大きいと危惧する。

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 日本では最近、救急車にあまり道を譲らなくなった気がする。救急車も真に急いでいるケースがある一方、無理をせずに信号待ちしている場合もある。風邪か何かで救急車を呼んだので、救急隊員もあきれはててしまっているのではないか? と勘ぐってしまう。

 米国では、救急車は有料。それでも呼ぶのだから真に救急だと皆が認識しているのだろう。救急車とはあいかわらず緊急時の車なのだ。日本でも有料化を考える時期に来ているのでは?

 町の診療所が老人クラブ化しているとも聞く。「あら、あの人、きょうは診療所に来ていないわよね。病気かしら?」との笑い話は、健康保険の高度負担のせいで老人医療費が安すぎるがゆえだ。

 夏の電力消費の抑制も値段で解決を図るべきだ。電力需要が逼迫(ひっぱく)してきたら、節電目標を決めたり、法律でペナルティーを科したりするよりも、値上げすべきなのだ。もちろん高齢者などが熱中症で倒れないよう最低限の使用料金は安くする2段方式がいいだろう。「電力不足と言われながらも、世界で一番明るい東京の夜」という矛盾も解消される。

 多くのことは市場原理にゆだね、値段の調整で解決する。ただ歪みも出てくるわけだから、それを正すのは政府の役割とする。

 国会で来年度の予算審議が始まった。消費税率の引き上げによる経済への悪影響に対処するためなのか、はたまた国民の不満を抑えるべくなのか知らないが、財政懸念はどこへやら、「ばらまき」が目に余る。格差是正を金科玉条に、なんでもかんでも政府が補填する公助重視の「大きな政府」では財政が持たない。

週刊朝日  2014年3月7日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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