柳川柳川藩5代藩主、立花貞俶の屋敷「御花」にて。役人の詰め所だった“御役間”に、現在17歳と19歳になるお嬢さんの雛壇とさげもんが飾られている。美しい柳川毬の数々だけでも見ものだ(4月3日まで) (撮影/写真部・慎芝賢)
柳川
柳川藩5代藩主、立花貞俶の屋敷「御花」にて。役人の詰め所だった“御役間”に、現在17歳と19歳になるお嬢さんの雛壇とさげもんが飾られている。美しい柳川毬の数々だけでも見ものだ(4月3日まで) (撮影/写真部・慎芝賢)

 桃色のぼんぼりに、はためくのぼり。書かれた文字は、「ひなまつり」。“早く片付けないとお嫁に行き遅れる”だなんて、どこ吹く風。早いところで2月初旬から、長くて4月後半まで、九州の広範囲にわたって見られる光景だ。

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 店舗であれば、ショーケースに。家であれば、扉を開けてすぐの所にきらびやかな人形が飾られている。代々受け継がれてきたもの、譲り受けたものなど多くの人形が町じゅうを彩る。

「こんにちは」と扉を開けて入ると、主人が奥から小走りでやってきて、もれなく笑顔でもてなしてくれる。これが県をまたいでも一様。気温は低くても、心がとにかく温まる! 目に映る美しさだけでなく、個々の人形にまつわる話なども、オトナにはお楽しみの一部だ。子どもの節句の背景には、子の幸せを願う親の思いがあり、それはいつの時代も、武家も庶民も変わらないということを実感する。

 人形を見て人とふれ合い、愛情を感じる。これが九州ひなめぐりの醍醐味だ。

週刊朝日  2014年3月7日号