2014年2月~3月に日本公演を開催する世界的に有名なバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」。彼らに魅せられた「シーナ&ザ・ロケッツ」の鮎川誠とシーナ、ミュージシャンの世良公則、ローリング・ストーンズの日本初オフィシャル・フォトグラファーの有賀幹夫による座談会で語られたストーンズ論とは。

鮎川:ストーンズはあまりドラムは上手くないとか、昔よく言われたけど、あんな素晴らしいドラムはおらんし、ギターのアレンジ、アンサンブル、2本のギターの絡みは、若い頃からものすごく卓越しとった。「ミックがこうやった時に俺はこうやるぜ」とか、音楽がすごく立体的やし、その場でその瞬間に作っている……。前もって、明日こうやろうとか、譜面に書いて、その通りやるような考えはどっかにいっとるやん。「何か出そうぜ!」ってバーンって出した時にその場で作る音楽がブルースの神髄であり、それをわかったストーンズがロックを作った。

世良:「リズムも取れない奴らだ」って言われたりもしたけど、でも、あのビートって、やってみようとしたらできない。大人になったぐらいでやっと気づくんですよね。バンドってリズムが大事だって。みんなカッコいいギターに憧れたり、カッコいいボーカルに憧れるんだけど、リズムに憧れたのも僕はストーンズが最初だったですね。もちろんレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムがカッコいいとかあったんだけど、「ロックン・ロールにこだわるってどういうことなんだろう」とかって思い始めた時に、ストーンズの難しさに気づいた。カッコよくキッチリと音符を合わせて、ギターを弾いても違うし。ストーンズの音楽って練習すればするほど遠くなって、「これストーンズじゃないよね」ってなる。

有賀:完成系がない。だから、センスですよね。

シーナ:きっちりやってないもんね。

有賀:僕が聴き始めた頃って、ストーンズは結構バカにされてました。下手なバンド、音が悪いバンドって。ツェッペリンとかパープルが流行ってたから……。

世良:例えば、ディープ・パープルをコピーしているバンドが出てきて、『ハイウェイ・スター』とかを完璧に弾き切ると、「うわぁー、上手い!」で終わるんですよ。でも、ストーンズの場合は、「上手い」じゃないんですよね、「凄い」なんですよ。「ローリング・ストーンズをやれてるよ、こいつら!」って。俺たちは決して上手いバンドじゃないけど、なんかカッコいいバンドになりたいっていうのが合言葉だったですよね。上手いとカッコいいがなんか別のことみたいな……。でも実は、キースもチャーリー・ワッツも上手いんですよ。上手くなきゃできないんですよ。

シーナ:そうなのよ。

世良:いいミュージシャンになりたいと思ったら、今日より明日、明日より来年やったら、もっと上手くなれるかもしれないという伸びしろみたいなものをずっと持っているじゃないですか。ストーンズの場合はその伸びしろ部分が時代の最先端の誰も理解できない早さじゃなくて、5分だけ早い、そんな感じなんですよ。「5分経ったらお前にもわかるよ」みたいな……。あれが、何年も先にいっていると、たぶん理解できないし、わかった頃には終わっているみたいになるんだけど、5分くらいだと、僕らの感覚でちょうどいいくらいに追いつけるんです。

週刊朝日  2014年2月28日号