出版50周年を迎えた今も人気を誇る絵本『ぐりとぐら』(福音館書店)。作者で児童文学者の中川李枝子さん(78)と、中川さんの作品に魅了された映画監督の宮崎駿さん(73)が2月上旬に都内で対談し、意外な過去を明かした。

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宮崎:実は『ぐりとぐら』の映画化を考えたことがあります。演出家を募り、コンテを出させ、おもしろそうな人間に信頼できるアニメーターをつけ、準備班まで作った。結局うまくいかなかったんですが。

中川:短編の「たからさがし」はよくできていました。

宮崎:ええ、僕が喜んでもしょうがないんだけど(笑)。『いやいやえん』も『ぐりとぐら』 も妹の山脇百合子さんが絵を担当していますが、素晴らしいです。邪念がなくて。

中川:妹は6歳下で『いやいやえん』の絵は板チョコ1枚で描いてもらいました(笑)。『ぐりとぐら』では妹が動物園や博物館へ行き、ねずみの剥製がズラリと並ぶ標本を見せられ、「どれでもお好きなものをどうぞ」と。ねずみはねずみ色と思い込んでいたらオレンジ色のもいて、絵本ではオレンジになったんですって。

宮崎:『ぐりとぐら』といえば大きな卵。例えば「散歩に行ったら大きな卵があった」という話なら、普通は「誰の卵?」「お母さんは卵を探しているかもしれない」となるんです。「カステラにして食べちゃおう!」と発想するのは中川さんだけ。小さい子どもにピッタリなんです。

中川:あら、そんなこと初めて言われました(笑)。なにせ目の前にいつもかわいい子たちがいる。その子たちを最高に良い状態にして眺めるのが保育者の醍醐味なんです。とにかくみんなを喜ばせたかった。びっくりさせるのも好き。ちょっと優越感持てるじゃない。

※週刊朝日 2014年2月28日号