ママになって五輪の舞台に戻ってきた船山(左)と小笠原 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 ソチ五輪の日本選手団には3人のママがいる。

 2002年ソルトレークシティー、06年トリノの両五輪に続く出場となるカーリングの小笠原(旧姓・小野寺)歩(35)と船山(同・林)弓枝(35)。五輪初出場となるフリースタイルスキー・ハーフパイプの三星(みつぼし)マナミ(30)だ。

 いずれも一度は競技を引退し、結婚、出産を経て復帰した。3人は五輪前、ママとして競技を続けることについて、同じ趣旨のことを口にしていた。

「精神的に安定したし、集中力と余裕が生まれました」

 どんなに練習で疲れていても、自宅に帰れば、常に自分の味方でいてくれる子どもがいる。完全に競技から離れていた時間があるからこそ、打ち込めるもののある日々が愛おしい――。こんな思いが、ママさん選手たちの強さを下支えしている。

 1月26日の大阪国際女子マラソンを最後に現役引退を表明した赤羽有紀子さん(34)は、06年の出産後に大きく記録を伸ばし、08年北京五輪に出場した。

「その気持ち、わかります。私も出産後、もっと上を目指そうという気持ちになりましたから」(赤羽さん)

 どんなときも、娘の優苗(ゆうな)ちゃんと触れあえば癒やされていたという赤羽さん。レース中、どれだけ沿道のファンが騒がしくても、優苗ちゃんと、夫でコーチの周平さんの声だけはちゃんと聞こえたという。

「いつも、大きなパワーをもらっていました」

 精神的に大きな支えとなる子どもと家族の存在。赤羽さんの場合は「出産後、心肺機能が強くなり、呼吸が楽になったことを感じました」と話すように、体調面でも好影響があった。

 女性アスリートの体調管理に詳しい神奈川県立保健福祉大学の鈴木志保子教授(スポーツ栄養学)は「女性の身体は25歳を過ぎてから安定する」と話す。

 出産を経て競技に復帰できる環境が当たり前になれば、より高いパフォーマンスを発揮する女性アスリートが増えると指摘し、「指導者も、花を咲かせる時期を長い目で見ることができるようになります」と語る。

 今大会での小笠原、船山、三星の活躍は、そんな環境を整える第一歩だ。それでも赤羽さんは言う。

「それぞれのお子さんにとって、ママの雄姿は夢を持つ大きなきっかけ。まずは支えてくれている家族のためにがんばってほしい」

 ママ、がんばって。

週刊朝日  2014年2月21日号