写真はイメージ (c)朝日新聞社 @@写禁
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 よりよい就職先を見つけたい学生と、有望な学生を採用したい企業――今年も熱くなってきた就職活動の現場に、とうとう他社の内定者を、そのまま「いただく」ことができるネットサービスが誕生した。いま学生に話題の「横取りサイト」って、いったい、なんなの?

 他社の内定を評価基準にして、学生を“横取り”してしまうネットサービス、その名もずばり「WILDCARD」。人気のカードゲームの「UNO」で、どんな場面でも自分の好きな色に変えてしまえる特別なカードのことだ。

 利用方法は、簡単だ。学生は、サイト上に学歴やアピールできる経験と合わせて、自分の「内定した会社名」を登録。経歴の確認は、イマドキらしくフェイスブックの情報で認証され、「内定通知書」をサイト運営会社のワイルドカード(東京都新宿区)の担当者が確認すれば、準備完了。そのサイトにアクセスした企業側が検索できるようになる。

 企業の人事担当者は、ライバル企業や一目置く企業から「内定」をゲットした学生を、「あの会社から評価されているなら、間違いないだろう」などと評価。直接、学生をスカウトできる。

 企業側と学生がメッセージのやりとりを経て、実際に面談をし、双方が納得すれば、晴れて内定が決まる。この時点で初めて企業側に「システム利用料」が発生する成功報酬型で、一人あたり約88万円。この報酬がワイルドカード社の収入になる。学生は無料だ。「約88万円」と聞くと、ややギョッとするが、この値段設定の根拠は何だろうか?

 ワイルドカード経営企画部の田中英智さんは、

「一般的には、学生一人を採用するために約100万円かかるとされています。広告を出し、会社案内を作り、会場を借りて説明会を開き、学生を集めて試験を実施し、面接をする。その費用と労力を考えると、断然お得です」

 確かに、企業側にすれば、無駄なく効率的に、厳しい選考を勝ち残ってきた優秀な学生に出会えるのだから、一石二鳥だ。サイトは、2013年4月にオープン。内定情報を自己PRの手段として用いている例は他になく、口コミで広まっているという。現在、首都圏を中心に全国の学生約千人が登録し、さらに増加中だ。

週刊朝日  2014年2月21日号