街頭演説で「どんどん若返ってきた」と語った小泉氏(右)と細川氏(左) (撮影/写真部・関口達朗)
街頭演説で「どんどん若返ってきた」と語った小泉氏(右)と細川氏(左) (撮影/写真部・関口達朗)

 脱原発の是非を問うた今回の東京都知事選挙(2月9日投開票)を、作家の瀬戸内寂聴氏は歴史の一ページとなるだろうという。

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 私は今回の都知事選で細川さんを応援し、何度もご一緒に街頭演説をしました。以前から政治には関わらないと心に決めていましたが、「今の政治の現状に、やむにやまれぬ気持ちで出馬した」という細川さんの情念に、感動したからです。

 細川さんとは会ったことがなかったんですが、一緒に演説して回って、素敵な方だとわかりました。品が良くて、他の候補者みたいに、大きな声で「私に投票してください」とか、ガチャガチャ言わない。小泉さんもそうですが、原発問題のことだけを話すから、選挙の演説というより、何か、学者さんの講演を聞いているような感じでした。

 でも、二人とも、とても真っ当なことを訴えていました。人間が自分の過ちを認めるのは難しいことですが、「今回の選挙は、首相時代に原発は良いものだと思って推進したことへのお詫びだ」と、はっきり言っていた。勇気のあることだと思います。不思議なのは、演説をして回っている間に、お二人がどんどん若返ってきたことです。最初にお会いしたときは正直、「ちょっと老けたな」と思ったんですが、見た目も元気になって、声にも張りが出てきた。たくさんの聴衆が一生懸命話を聞くものだから、そのエネルギーが二人に伝わったんですね。街頭演説には本当にたくさんの人が集まってくれました。

 ちょっと残念だったのは、年配の方が多く、若い人が少なかったこと。日本の将来についての話ですから、私は若い人たちにこそ話を聞いてほしかった。中にはインターネットを通して演説を見た人もいらっしゃるでしょうが、若い人には政治に興味はあっても選挙には行かない、という人が多いとも聞きます。これからは、なんとかそういう人たちを集めていかないといけませんね。

 安倍政権は憲法を変えようとしたり、特定秘密保護法を作ったりと、戦争をしたいとしか思えない。原発再稼働なんて、とんでもないことです。今回の都知事選は、そういう国の政治の方向を変える力を持つ選挙でした。たとえ負けても、安倍さんの考えていることに反対の人がこれだけ大勢いると示すことができたし、それは歴史にも残る。それに細川さんや小泉さんの訴えたことは、聞いてくれた人たちの心にずっと残っていくはずです。だから、私は後悔していません。本当に、二人を応援して良かったと思っています。

週刊朝日  2014年2月21日号