ソチでも可能性あり? 「黒い未亡人」の自爆テロ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

ソチでも可能性あり? 「黒い未亡人」の自爆テロ

このエントリーをはてなブックマークに追加
五輪会場近くの主要駅では、厳しいセキュリティーチェックが (c)朝日新聞社 

五輪会場近くの主要駅では、厳しいセキュリティーチェックが (c)朝日新聞社 

 ソチでは現在、ロシア当局が総額2千億円といわれる巨額の経費をかけ、空前の警備態勢を敷いている。

 それでもテロの懸念は小さくない。ソチはチェチェンやダゲスタンといったイスラム武装勢力の本拠地から目と鼻の先であり、彼らの行動圏内であるからだ。

 米政府はすでに、現地を訪問する国民に対し、安全注意を勧告した。2月4日には米議会下院情報特別委員会の公聴会で、米国家テロ対策センターのマシュー・オルセン所長が「具体的な脅威が複数存在する」と証言している。

 五輪テロの脅威は単なる噂などではない。まさにいま、そこにある脅威なのである。

 しかも、チェチェンのイスラム武装勢力が現在、活動をかなり活発化しつつある。というのも、中東シリアの内戦にチェチェン人のイスラム過激派が数百人規模で参戦しており、アルカイダ系の武装組織「イラクとシャームのイスラム国」(ISIS)の主力となっている。そうしたシリア遠征組に刺激され、ロシア国内に潜伏する仲間たちも“大きな戦果”を目論んでいるとみられている。

 なかでもロシア治安当局が血眼になって行方を追っているのが、「シャヒトカ(女性殉教者)」と名乗るテロリストグループだ。別名「黒い未亡人」とも呼ばれている。

「黒い未亡人」はチェチェン最大の反政府武装組織「カフカス首長国」が、チェチェン紛争で夫や兄弟を亡くした女性などを自爆テロ要員に仕立てたもの。女性であれば厳しい警備を潜りやすいと、2000年代初めにカフカス首長国の前身だったイスラム武装勢力「シャミル・バサエフ派」が組織した。

 バサエフ派は病院や小学校をテロの標的にするなど、手段を選ばない強硬路線で知られたグループだった。バサエフが06年に殺害されると、現在の司令官ドク・ウマロフが跡目を引き継ぎ、「黒い未亡人」によるテロも継続した。ちなみにウマロフは長年所在が未確認で、死亡説もある。

「黒い未亡人」は、00年にチェチェン内のロシア軍基地を自爆攻撃したのを皮切りに、チェチェンやその周辺地域はもとより、モスクワ市内のホテルやカフェ、ロシア南部の列車、航空機などを標的に自爆テロを続けてきた。近年では10年のモスクワ地下鉄駅連続爆破(40人死亡)、11年のモスクワ空港爆弾テロ(37人死亡)、昨年11月のロシア南部ダゲスタンでの駅・バス連続自爆テロ(22人死亡)などが知られている。

 ロシア治安当局は「黒い未亡人」のテロリスト4名を指名手配し、行方を懸命に追っている。おそらくその何人かは、すでにソチに潜伏しているとみられる。「黒い未亡人」の自爆の手口は、ゆったりしたイスラム衣装の下に爆弾を隠し持ち、標的に近づいて起爆するもの。それはロシア側も承知しており、五輪会場では徹底した観客の身体検査が実施されるはずだ。

 だが、それだけではもちろん安心できない。会場内のテロは防げたとしても、ソチの街すべてで、そのような厳格な検査は不可能だからだ。

 前出のオルセン米国家テロ対策センター所長は1月29日の議会公聴会で、「警備の厳重な会場より、周辺の公共施設などのソフトターゲット(比較的警備の緩い標的)が危険だ」と証言している。外国人観光客が集まるホテルやレストラン、ナイトスポットなどはとくに注意が必要だろう。

 華やかなスポーツの祭典のウラで、現地では今日も女性テロリストと治安当局の熾烈な戦いが続いているのだ。

週刊朝日  2014年2月21日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい