都知事選出馬のきっかけはツイッターだった――。家入一真氏(35)は出馬の経緯をごく自然体で話す。

「『千リツイートされたら出馬する』って冗談半分でつぶやいたら、30分で千に達したのがキッカケです。ただ、お金がないので、『供託金がないわ』ってつぶやき続けたら、堀江(貴文)さんが『俺が貸すから』という感じでツイッター上でからんできて、マジッすか、みたいな」

 家入氏は、いじめや引きこもりを体験し、22歳でインターネットのサーバーを貸す会社を立ち上げた。29歳でジャスダック市場に史上最年少で上場を果たすという経歴を持つ。お金がないとは思えないが……。

「確かに上場して30億円くらいは現金としてありました。でも、3年くらいで使い果たしてしまった。起業したいという若い子たちにどんどん出資したのと、あとは酒ですね。月に1千万~2千万円は使っていました。当時は、大金を持って狂ってたんだと思います」

 破天荒な経歴を持つが、その選挙戦術も型破りだ。街頭演説はしない。スマホからライブ映像を配信できるツイキャスを使って自分の姿と声を届けてきた。

「一方的に、これが正解です、と政策を言うような選挙はしたくなかった」

 それで異例だが、政策もツイッター上で募集した。選挙資金もネット上で多数の人から集めるクラウドファンディングで調達した。その額は、わずか4日間で700万円を超えた。

 クラウドファンディングのサイトを運営するJGマーケティングの佐藤大吾代表取締役はこう言う。

「国内で選挙にクラウドファンディングを持ち込んだのは、実質的に家入さんが初めてでしょう」

 だが、こうした手法は、政治資金規正法などに抵触しないのだろうか? 都選挙管理委員会に聞いた。

「家入さんと食事する権利などがついているので、売買契約と言えますから、規制はかかりません」

 ボランティアをフェイスブックで募集すると、2千人以上が集まった。おかげで、組織がなければ難しいポスター貼りも、用意した1万4千枚すべてを貼ることができそうだ。

 家入氏になぜこれほどの人とカネが集まるのか。

「彼は“触媒”なんです。本人よりも周りの人々がそれぞれ面白い動きをするんです」(選挙スタッフ)

 不思議な求心力を持つ家入氏のネット選挙は、どこまで通用するか。

※週刊朝日 2014年2月14日号