金哲彦さん(右)と林幸枝さん(左) (撮影/写真部・関口達朗)
金哲彦さん(右)と林幸枝さん(左) (撮影/写真部・関口達朗)

 マラソン・駅伝の解説や、市民ランナーへの指導で活躍する金哲彦さんと、その妻の歯科医・林幸枝さん。二人が出会ったのは、ランニングを通して健康な生活を実現するという、あるチャリティーイベントの打ち上げの席だった。そこで、金さんのことを見た幸枝さんは、てっきり金さんのことをゲイだと思いこんだという。そのときの様子をお二人に聞いた。

林「40代、50代の成功した諷爽(さっそう)とした男性に囲まれて、金さんはその輪の中心でワイングラスを口に運んでいたんです。おしりが小さくて、腰に手をやって、すてきな立ち姿。それに清潔感がただよっていて。でも私にはそれが変な絵にしか見えなくて、『ゲイなのかしら?』と思ってしまって」

 その日は名刺交換にとどまり、金さんは幸枝さんを「歯医者さん」ということで記憶し、幸枝さんには「金さんはゲイ?」という印象が刷り込まれる。数カ月後、金さんが歯のメンテナンスをしようと思い立ったとき、思い浮かんだのが幸枝さんだった。幸枝さんは知り合いの専門医を紹介、治療を終えた金さんはお礼に食事に誘う。「第2段階」である。

 ふたりきりの食事が2度目になって、幸枝さんは核心的な質問を我慢することができなかった。

林「疑問を持ったままお会いするのも嫌だったし、ちょうどその当時はやっていたアメリカのテレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』を見て男性と女性の両方を愛せる人がいることを知り、いきなり、金さんに『“ストレート”ですか、それとも“ダブル”です
か?』って質問してしまったんです」

金「びっくりしました。そんな質問は生まれて初めてだったし、本当に驚きました。でも、思い返せば、率直に質問をしてくれたおかげで、より打ち解けることができたんです」

週刊朝日 2014年2月7日号