作家の室井佑月氏は、都知事選の投票になんとしても行くと宣言している。その理由は……。

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 ついさっきある雑誌から、都知事選についてコメントが欲しいと電話があった。記者がいう。

「たかが地方選で、なんでこんなに盛り上がっているんだと思いますか」

 あたしは絶句した。記者はつづけた。「都知事選なのに、原発のことが争点になるっておかしいですよね」。

 なんだか話が変な方向に行きそうなので、「あのぉ、あたしはそうは思っていないので、この話は……ごめんなさい」とコメントをお断りした。

 電話を切ってからも頭の中は「?」がたくさん。あたし、間違ってないよね。不安になって、今朝の朝刊をもう一度読み直すことにした。

 1月16日付の東京新聞の1面、「東電再建 税金なし崩し」というタイトルの記事。

「茂木敏充経済産業相は十五日、東京電力の新たな総合特別事業計画(再建計画)を認定した。福島第一原発事故に伴う除染関連費を国費で賄うなど東電の負担を軽くした上で、柏崎刈羽原発(新潟県)を七月から再稼働、利益を出し被災者への賠償資金を工面するとの内容。東電の経営陣や株主らの責任は問わず、なし崩し的に税金を投入する計画への批判が高まりそうだ」

 政府が貸し付けるお金の上限が5兆円から9兆円になるんだって。

 それに、「計画には柏崎刈羽原発の稼働が遅れた場合、今年秋にも家庭と法人向けを合わせ平均で最大10%の電気料金値上げが必要になるとも明記した」という。2012年にも値上げして、またですか。

 なんだろうね、この面の皮の分厚さ。原発事故を起こしといて、「じゃ、値上げすんぞ」と脅しにかかる。どうしてそれをまた政府が許すんだか。

 その理由は、週刊現代の「新春」合併特大号に書かれてあった。「イカれてないか! 東電と巨大銀行 『生き残り』と『ボロ儲け』で利害が一致。最後は税金を食い逃げする気だ」という記事だ。

 内容をかいつまんでいうと――東電に支払うカネは、国が金融機関から融資してもらっている。金融機関は相当な利息を受け取る(会計検査院の試算によれば、国から東電に5兆円が交付された場合、国が金融機関に支払う利息額は約794億円。9兆円になったら? ワーオ!)――というもの。

 誌面で元経産省の古賀茂明さんはこういっていた。「将来いくらに膨れ上がるかもわからない除染などの費用を政府が税金で面倒見ることになりました。―中略―つまり、銀行は1円も損することなく融資ができて、東電も経営が危なくなった時は税金か電気料金の値上げで助けてもらえる。経産省は天下り先の東電と銀行を守り、東電と銀行は責任を回避した上、すべてのツケが国民に回るのです」

 ゲゲッ。そんなの許せない、あたし。だから都知事選には這ってでも行くよ。

週刊朝日 2014年2月7日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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