アルコール依存症とはどんな病気なのか。自らも依存症を克服した経験を持ち、現在、患者を支える自助グループ「全日本断酒連盟」(東京都千代田区)の事務局長を務める大槻元さんに、アルコール依存症になりやすい人の特徴や、自助グループの役割などについて聞いた。

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 アルコール依存症は「意志が弱い人がなりやすい」病気と思われがちですが、実際にはその逆です。物事を白黒はっきりつけないと気が済まないような、完璧を求める性格の人がなりやすい病気です。極端な考えが自分を苦しめ、思うようにならないストレスで酒量が増え、結果的に依存症に至る、というケースが多いのです。

 また、この病気は「否認の病」と呼ばれています。病気によって問題が起きても、「自分のせいではない」「自分はアルコール依存症ではない」と考えてしまい、自分の問題として受け止められないのが特徴です。

 自分の性格や置かれている状況を自覚し、今後どうなりないのか考えてもらうために、自助グループというものはあります。

 自助グループは、かつて同じようにこの病気で苦しんだ人たちで構成されています。お酒をやめて数十年たった人が自らの体験談を話すことで「生きた見本」を見せることができます。

 病院での治療には期限がありますが、依存症から脱却するためには、その後、生涯にわたってお酒をやめなければなりません。

 しかし、入院治療を受けて一度お酒をやめることができても、退院して一人になると再び飲んで、ふりだしに戻ってしまう人もたくさんいます。他人とのかかわりを断って、悩みや心配ごとを一人で抱え込んでしまうことはとても危険です。一人の世界に身を置いてしまうと、都合の良い考えや解釈ばかりをして、再びお酒を飲む口実を作ってしまうからです。

 他人とのかかわりをもつことは、面倒なこともありますが、自助グループなどで同じ境遇の人の話を聞くことや、不安や悩みを他人に吐き出すことで、自分の問題を客観的に見つめ直すことができます。

 自分や家族が「もしかしたらアルコール依存症かもしれない」と感じたら、一人で抱え込まずに、病院や自助グループに相談することが何よりも大切です。

週刊朝日 2014年1月31日号