今月25日から丸の内ピカデリーほか全国で公開される、山田洋次監督の新作映画に出演する女優の黒木華さん。

「オーディションのとき、監督からは、“なで肩がいい”と言われました(笑)」

 山田洋次監督の82作目となる映画は、昭和初期、東京郊外の中流家庭で起こったある恋愛事件を描いた「小さいおうち」。黒木さんは、その家に奉公した女中・タキを演じている。

「女優になりたいという気持ちを抱くようになったのは、舞台がきっかけでした。小さい頃からずっと、舞台を観るのが好きだったんです」

 大学在学中、野田秀樹さんの演劇ワークショップに参加。舞台「ザ・キャラクター」にアンサンブルとして出演した。“黒木華”という名前が、世間的に大きくクローズアップされたのは4年前。NODA・MAPの番外公演「表に出ろいっ!」のオーディションに合格し、中村勘三郎さんと野田さんとの3人芝居の娘役を射止めたときだ。出演したCMの演出を手がけた、岩井俊二監督は、彼女のことを“文学的な香りのする女優”と評しているが、たしかに映画の中のタキも、目の前で質問に答える彼女自身も、どこか懐かしくしとやかで、現代のガチャガチャしたテンポからは、一線を画した静けさの中に存在しているように見える。

「現代っ子っぽくないとはよく言われます(笑)。平成生まれではあるけれど、音楽なら山口百恵さんとか、昔の歌が好きだし、本なら、太宰治の小説に出てくる言葉に惹かれたり……。現代の文学も読みますし、現代の音楽も聴きますけれど、私が、いろんな作品をいいなと思う基準は、そこにある“言葉”が美しいかどうかなんです。言葉を使う職業ということもあり、言葉を大事にしたいなとはいつも思っています」

週刊朝日 2014年1月31日号