刻々と変わる情勢の中、目が離せない東京都知事選。細川護熙(もりひろ)元首相も出馬を表明したが、細川氏が首相の座を降りたきっかけである佐川問題とは何だったのか。元参議院議員の平野貞夫氏(78)が明かす、その真相には意外な裏話があった。

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 当時、連立与党の一つ、新生党の参議院議員だった私は、細川元首相の1億円借り入れ問題の対応に当たりました。

 1992年、自民党の金丸信元副総裁が佐川急便から5億円の闇献金をもらったと発覚して大騒動になり、93年に自民党政権が倒れて細川連立政権が誕生した。だから細川氏と佐川に金銭関係があったら致命的で、当時野党だった自民党は、そこを狙ってきた。細川氏が佐川から1億円借りたという情報をとってきて、国会で追及を始めました。

 細川氏は、借金は認めていました。佐川とは父の代からの付き合いがあり、本県知事になる前年の82年に担保を入れてカネを借り、熊本の私邸の修理代や東京での不動産の購入にあてていたんです。細川氏は「お金は返した」と主張しましたが、自民党側は納得しない。細川氏は返済時に佐川からもらった領収書を公開しましたが、佐川の社名が書かれていなかったので、信憑性が問題になったわけです。細川氏は間違いなく本物だという。当時、佐川はいろいろな政治家にお金を渡していて、たいてい返さない。細川氏が珍しく返したから、そんな乱暴な領収書になったようです。

 細川氏は「佐川側の帳簿に返した記録がある。それを公開すれば疑惑が晴れる」と考えた。しかし帳簿は92年の事件で当局に押収され、裁判中で出せないという。国政調査権を使って提出要求し、法務省幹部と折衝すると「前向きに検討する」とのことでした。ところが後日、この幹部は「佐川の帳簿には細川氏以外にも与野党の大物政治家の名前がズラリと並んでいた。しかも細川さん以外はカネを返していない。公開すれば政界は大混乱になる」と。結局、諦めざるを得ませんでした。

 証明はしきれませんでしたが、問題の争点はあくまでお金を返したかどうかで、政治に使う裏金でなかったのは明白。佐川へ便宜を図った疑惑もなかった。東電病院売却の話が浮上している猪瀬直樹氏とはまったく違うのに、メディアに印象操作されていると思います。

週刊朝日 2014年1月31日号