強烈なインパクトを与えた「元首相タッグ」 (c)朝日新聞社 @@写禁
強烈なインパクトを与えた「元首相タッグ」 (c)朝日新聞社 @@写禁

 細川護熙(もりひろ)元首相が小泉純一郎元首相とタッグを組んで、衝撃的な都知事選出馬表明をした1月14日は、細川氏の76歳の誕生日だった。

 細川氏の選対事務局のメンバーは現時点で約40人。自民党、日本維新の会、民主党、生活の党の現職議員らが派遣したスタッフと元議員らが事務局として詰めている。その一人の木内孝胤前衆院議員(生活の党)がこう語る。

「私が全体のコーディネートをし、元議員らが政策の取りまとめ役です。政党色はなく、役職もありません。小泉氏からは、日程組みや選挙運動の方法について、かなり踏み込んだアドバイスをもらっています」

 ここを中心に、日本新党時代からの側近や細川氏の古参秘書のグループ、細川政権で首相秘書官を務めた成田憲彦氏(67)や元経済企画庁長官の田中秀征氏(73)ら盟友たち、それに、元官僚などがブレーンとして政策を練っているという。

「異色なのは、細川家と親類関係にある徳川宗家の当主の長男で、経済評論家の徳川家広氏もブレーンになっている。細川氏の元秘書で維新の会国会議員団幹事長の松野頼久衆院議員も、スタッフを送り込み、日本新党出身者が多い民主党も支援リストを持ち込んでいる」(細川選対関係者)

 そして、自民党の若手議員で「脱原発」を主張する秋本真利衆院議員(38)までもが、こう語った。

「細川氏、小泉氏の脱原発の主張にはもろ手を挙げて賛同したい。それ以外の主張が自民党とそれほど違わなければ、応援にはせ参じるつもりです。党として舛添要一氏の推薦を機関決定していないし、私は千葉県の議員なので、フリーハンドのはずですから」

 だが、秋本議員はその後、16日午後に官邸の菅義偉官房長官(65)に呼び出された。都知事選の話題はなかったというが、報道陣には「わざわざ1期生を呼び出すなんて、『応援に行くな』とくぎを刺したのでは」という見方も広がった。

 多様な人脈が集う一方で、こんな声もある。

「自民党の鳩山邦夫議員の元秘書で、保守色の強い元議員が選対を仕切り始め、『脱原発』で共闘を模索していた宇都宮健児・日本弁護士連合会前会長の陣営との一本化は難しくなった。今後は国会議員がどう関与するか、検討中です」(前出の細川選対関係者)

 保守・リベラルが入り乱れる混成部隊だけに、水面下の“主導権争い”があるというのだが、前出のブレーンの一人は「まったく問題ない」と反論する。

「都知事選の争点はシンプルに『原発即ゼロ』をアピールする以外にない。いろいろ書かれているが、細川さんはさすが殿で超然とし、まったくぶれていない。それに少子化・高齢者対策、防災対策、オリンピックをきちんとやる点では舛添さんと差はつかないでしょうが、『脱原発』と言う舛添氏も自民党や経団連の意向は無視できず、『即ゼロ』は主張できないでしょう」

 確信犯的に「シングルイシュー」で喧嘩を仕掛ける手法は、今回の“軍師”である小泉氏の十八番だ。そして小泉氏は、こんな壮大な構想を描いているという。

「細川都知事が誕生した暁には、『脱原発か、否か』で都民が住民投票をする。脱原発が勝てば、来秋の自民党総裁選で脱原発を旗印に安倍晋三首相への対抗馬を立てる。安倍政権の原発政策に批判的な若手に秋波を送っているそうです。スタートダッシュは舛添さんがリードしてますが、小泉さんの勝ちパターンに徐々に持っていきます」(前出のブレーンの一人)

 今回の都知事選を織田信長の「桶狭間の合戦」に例えたという小泉氏は、その言葉どおり、敵の大将・安倍首相の首に狙いを定め、一気に攻め込むというのだ。そして細川氏は都知事に就任後、「脱原発」を掲げた新党を設立し、野党再編を一気に加速させるという青写真も出ている。

週刊朝日 2014年1月31日号