田原総一朗「小泉・細川ツーショットで始まった『奇妙な都知事選』」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「小泉・細川ツーショットで始まった『奇妙な都知事選』」

連載「ギロン堂」

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 公開討論会が中止になるなど、告示前から波乱を迎えた東京都知事選。ジャーナリストの田原総一朗氏は細川護熙元首相の立候補表明会見から「妙な選挙戦になったものだ」という。

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 東京都知事選挙に、細川護熙元首相が立候補を表明した。それまでは、舛添要一元厚生労働相の楽勝と見られていたのが、俄然、白熱戦が予想されることになった。

 1月14日の細川氏と小泉純一郎元首相のツーショットの中継映像は、強烈な迫力があった。

 小泉元首相は、昨年の11月12日に日本記者クラブで「脱原発」の講演を行った。フィンランドの使用済み核燃料の最終処分場である“オンカロ”を視察し、核燃料が無害化するのに約10万年かかると知って、「脱原発」を主張し始めたのである。しかし、記者クラブの講演では「即脱原発」だと強調し、政治家は決断すればよいのであって、代替エネルギーの開発は専門家や官僚たちに任せておけばよいのだと言い切った。さらに、原発推進派は使用済み核燃料の最終処分の方法と場所を確定するのだと言い立てているが、これは無責任極まりなく、福島原発の事故まで40年以上も見当さえつかなかったものを、確定できるはずがないと断定的に言った。

 だが、こうした言い方はまさに小泉流と言うか、無責任そのもので、日本には既に使用済み核燃料が1万7千トンもたまっていて、たとえ「即脱原発」を実施しても、何としても1万7千トンの最終処分をしなければならないのである。そのことについて、小泉元首相は一言も言及していない。

 また、自民党以外の全政党は「脱原発」を唱えているが、共産、社民以外のどの政党も長短の差はあっても、代替エネルギーの開発に20~30年は必要だと認めている。その意味では、小泉元首相の主張は、冷静に考えればリアリティーに欠けているのである。

 そして、細川氏は小泉元首相に共感して、全面的な支援を得ているのだが、細川氏は、リアリティーの問題はどのように考えているのだろうか。現役を離れた元首相の演説ならば理想論を語っているだけでも済むのだが、都知事を目指す候補には当然ながらリアリティーが求められるはずである。

 東京都には原発はない。東京都民は電力の消費者であって、都知事選に「脱原発」を持ち込むのは筋違いだとする意見もあるが、私はそうは思わない。いわば東京は、原発立地を福島や新潟に押し付けているのであって、原発論議は大いにやるべきだと考えている。ただし、リアリティーのある論議をしてもらいたい。小泉元首相の日本記者クラブでの講演で、その大きな矛盾点をまるで追及できなかった記者たちのようでは困るのである。

 もっとも、舛添氏にも、大きな矛盾点がある。舛添氏は自民党を飛び出して、自民党から除名処分を受けているのである。その舛漆氏を、自民党が推すというのは明らかに矛盾であり、無節操と批判されても弁明はできないであろう。自民党は独自候補を立てて当選させられる自信がなくて、無節操になってしまったのであろうか。それにしても、妙な選挙戦になったものだ。

 小泉元首相とのツーショットで華々しく出馬宣言した細川氏は、もしも都知事になったら、いったいどのような都政を展開しようとしているのか。この原稿を書いている時点では、「脱原発」以外には何の政策も出てきていない。だいいち、細川氏は都政というものに関心を持っているのであろうか。

週刊朝日  2014年1月31日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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