日本からインドやトルコ、ベトナムへの原発輸出が議論を呼んでいるが、最初の「日の丸原発」は台湾にある。2011年の稼働を目指していたが、トラブル続きで現在も稼働に至らず。福島第一原発の事故をきっかけに、反対運動にも火がついた。「人力社」代表で旅行ライターの中山茂大氏(44)が、台湾の現状をルポした。

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 台北市から東に約40キロ。新北市貢寮区の港町、福隆から車で10分ほど走ると、左手に緑色の巨大な箱のようなコンクリートの建造物が姿を現す。台湾電力が建設する「龍門発電所」だ。正式名称は「台湾電力公司第四核能発電廠」。一般的に「核四」と呼ばれる台湾第四の原発である。

 一般車が行き交う公道に面して立つ原子炉建屋を横目に、「核四」から最も近い市街地、塩寮に向かった。繁華街の一角にある寺院の屋上に上がらせてもらった。街の後方に大きな煙突、その隣に、先ほど通り過ぎた緑色の建屋が見える。炉心まで、わずか1キロほど。あの建屋が吹き飛んだら、一瞬で放射能が飛散してくることだろう。

「1号機は95%、2号機は92%完成していると言われています。いつ試運転が始まってもおかしくない」

 稼働に反対する「貢寮反核自救会」会長の呉文樟さん(56)は、建屋を指さして言う。

「核四」は日本のメーカーが海外に輸出した初の「日の丸原発」として知られる。使用する原子炉(改良型沸騰水型炉)は、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が設計し、日立と東芝が製造したもので、柏崎刈羽原発6号機、7号機と同じタイプだ。1999年に建設が始まり、中華民国建国100年の節目である2011年に稼働を始める予定だった。しかし脱原発を掲げる民進党の陳水扁政権が誕生すると、工事は一時ストップ。すると議会の過半数を占める国民党が猛反発し、01年に建設が再開された。

 だが現在も、いまだ稼働には至っていない。原因のひとつが、事故やずさんな施工管理だ。原発の安全監督を担う「行政院原子能委員会」によると、過去に人為的なミスが201件、違法な施工事例が123件、規定より劣悪あるいは規格外の資材を使うといった改ざん事例が57件報告されている。また重大事故だけでも、10年に6件、11年に3件起きている。いずれも電気系統の故障による発火や焼失、異常浸水などだという。

※2014年1月31日号