やしきたかじんさん 記者への義理を果たした男気 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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やしきたかじんさん 記者への義理を果たした男気

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 1月3日に歌手でタレントのやしきたかじんさんが亡くなった。享年64。ジャーナリストの今西憲之氏は、生前のやしきたかじんさんに「男気を感じた」というこんなエピソードを語った。

*  *  *
 私とたかじんさんとの出会いは、約20年前、ある金融機関が絡んだ事件だ。

「たかじんさんに融資した後、高金利で返済されるので、投資をしてくれ」

 金融機関職員が、詐欺話をして、顧客から現金を騙し取っていたのだ。

 取材を進めると、職員と親しい関係が浮かんだ。直撃したところ、たかじんさんは、「どこで、それを聞いてきたんや。書くつもりなんか!」と血相を変え迫ってきた。

 たかじんさんによると、「自分が預けたカネを勝手に投資に使われた。めちゃめちゃ怒ったわ。そしたら、同額近くが返ってきた」ということだった。後の警察の捜査により、顧客から騙し取ったカネで、職員がたかじんさんに返済をしていた事実が判明。たかじんさんは事件に関係無いと記事掲載は見送られた。

 取材から1年以上が経ったある日、たかじんさんから連絡があった。

「名前を出さずに辛抱してくれた。おおきに。どっかで借りは返すから」

 それだけ言って、電話は切れた。

 それから10年近くが経過した頃、ある政治家についてどうしてもたかじんさんに聞きたい話があった。大阪・北新地のクラブで張り込み、名刺を渡したところ、

「ああ、お前か。しゃあない。ついてこい」となり、それから店を5軒はしごすることに。

「お前には借りがある。この話でええか」。たかじんさんが語りだした頃、時計は朝の4時を指していた。

 豪快で知られるたかじんさんだが、実は自宅ではテレビを何台も並べ、さまざまな番組を録画し、徹底的に研究をしていた。私がその部屋を見てみたいと、粘ってお願いしたところ、「見るだけや。1分だけやぞ、写真はアカン。俺がテレビに出ている間は絶対に見たって言うな、約束や」と言い、1週間後、指定のマンションに案内された。

 部屋には6台のテレビと録画装置が並んでおり、普段、たかじんさんは2台、3台と同時に見ながら勉強していたという。

 豪快な語りの裏側にある努力の蓄積を、垣間見た気がした。

週刊朝日 2014年1月24日号


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